第六話 003
記者A「あの柏原がすっごく食いついていましたね? あの子に」
――Tシャツには『月刊空手ファミリー編集部』の文字。
編集長「知り合いか何かだろ?」
と、メモ帳にボールペンを走らせる編集長(男・50代)。
記者A「まーたスケッチすかー? せっかく僕がカメラに収めているのにー」
編集長「こうやって、選手の顔を自分で描かないと覚えられないんだよ」
記者A「ほんと、相変わらず変わったお人で……」
編集長「この子、初めて見る顔だが……どこかで……」
と、スケッチした夏の絵を見て。
編集長「(歩き出して)まぁお花見女子は北川がいないと厳しいだろうから、Bブロックの決勝進出は、浅井がいる日本青空かなー?」
記者A「(追いかけて)あ、ちょっと待ってくださいよ編集長!!」
× × ×
『お花見女子高等学校』と書かれた紙が貼ってある、2Fの観客席の一角。
春香「そういえば音葉ちゃん、約束事って今どうなってるのー?」
と、荷物を置きながら。
音葉「ステップ2の3『もう一度空手と向き合う』って約束事?」
春香「うんうん」
音葉「その約束事……私の高校一年生11月の記憶なら、私と夏が空手道部に入部した時に思い出したかな?」
加奈「夏先輩はそのことを?」
音葉「うん、伝えてある」
「だから夏は今、約束事のためではなく、自分のために前へ進もうと頑張ってるの」
春香「そうだったんだー」
音葉М「がんばれ夏!!」
と、会場の夏を見て。
× × ×




