第一話 009
○元の屋上のドア前スペース
夏「音葉は、鬼島に絡まれたことを誰にも言わなかった……」
「私が夏の暴力を止めるって」
加奈「音葉さん、すごく強い人ですね……」
夏「まぁそれ以来、鬼島はウチに絡んで来なくなったけど」
「今度は『ウチに近づいたら怪我をする』って噂だけが一人歩きして――」
春香「噂を信じる人なんて、表面しか見てない証拠だよ!!」
「なっちゃんは約束事を必ず達成するんだって、『うまいんだ棒』みたいにちゃんと芯が通ってるのに!!」
[お菓子のうまいんだ棒のイメージ]
夏「おい、あれ中空洞だろ……」
春香「おおう……」
夏「でも音葉だけは、いつもウチのそばにいてくれた――」
○夏の回想・お花見女子高等学校・武道場(二月・午後)
雪が振る中、武道場で、剣道の練習をする音葉。
武道場の外、あぐらをかき、漫画本を読む夏。
ふちメガネ姿。コートにマフラー。脇には鞄。
雪かきがされていない地面には、10cmほどの雪。
○夏の回想・通学路の下り坂(夕)
雪は止み、夕焼けが広がる。
傘を持ち、並んで歩く夏と音葉。
音葉「ごめんね夏、いつも待たせちゃって」
夏「いいよ、どうせ暇だし」
音葉「夏、出会った頃と比べてだいぶ変わったね?」
夏「そっか?」
音葉「うん、前向きになった」
夏「(照れながら)そ、それは……お前がそばにいてくれたからなっ!?」
音葉「(歩きながら)Zzz……」
夏「そこで寝るなよ!?」
音葉「! うふふっ。大丈夫、ちゃんと起きてたよ」
夏「ホントかよ……」
音葉「夏、あのね。私、夏と出会った六月から、一ヶ月に一つ『夏を幸せにする約束事』を考えてたんだ」
夏「え?」
音葉「夏がこの約束事を達成したら、もっともっと前向きになれるかもしれないよ?」
夏「何だよそれ?」
音葉「まずは一年に一人、自分で友達を作ってみて? 同じ学年で作り辛かったら、新入生でもいいんじゃない?」
「(笑顔で)だって、夏の変な噂を知らない子たちなんだから」
夏の回想終わり。