第五話 017
○同・はなれの大広間
大広間に布団が敷かれている。
電気が消えた中、懐中電灯を顔に当てた恵介。ジャージ姿。
その周りに座り、怪談話を聞かされているみんな。
恵介「それ以来、夜中の二時を過ぎると、片足を負傷した兵隊の幽霊が出るんだそうだ……」
[木の棒を片足に埋め込んだ兵隊の幽霊のイメージ]
みんな「きゃー!!」
恵介「よーし、明日は朝六時に玄関前に集合なー」
と、電気をつけて。
みんな「はい!!」
恵介「あ、言い忘れてたけど、俺は本館のフカフカ布団でゆっくり寝るからー」
と、大広間を後にする。
みんな「ブーブー!!」
夏「ん? 音葉、何見てるの?」
――手帳を見ている音葉。手にはペン。
音葉「うん、ほうとう杯までのスケジュール」
と、今日の日付に斜線を引いて。
夏「(覗き込んで)よし、まだまだ時間はたっぷりあるな!?」
音葉「え? 夏、気持ちに少し余裕ができた?」
夏「……まあな」
真中「そろそろ消しますねー?」
みんな「はーい」
真中「みなさんお疲れ様でしたー」
と、電気を消して。
みんな「おやすみー」
× × ×
窓をガンガンガンと叩く音。
みんな「何!?」
春香「な、なっちゃんちょっと見てきてよー」
夏「なんだよもう……。風じゃないのか?」
と、窓まで行って。
――窓の外で懐中電灯を顔に当てた恵介。
夏「うわあ!!」
――ガラッと窓を開ける夏。
夏「何やってんだよ!?」
恵介「いやー、みんなにおやすみを言い忘れてたから……」
夏「お・や・す・み!!」
ピシャッと窓を閉める夏。
× × ×
春香「なっちゃん起きてる?」
と、夏の隣に寝ている春香。
夏「んん……何だよ?」
春香「トイレ……」
夏「はー? 一人で行ってこいよ?」
[以下ヒソヒソ声で]
春香「だってほら、もう二時を過ぎちゃってるし……」
と、スマホを見せて。
夏「お前、あんな子どもだましの話を信じてたのか?」
春香「だって怖いんだもん」
夏「しゃあねえな……」




