第一話 008
○夏の回想・同・夏のクラス(翌日・昼休み)
生徒D「音葉ちゃん今日学校休んでるけど、立花さんが何かしたんでしょ!?」
と、夏の席を取り囲む生徒数人。
――黙ったままの夏。
音葉「(扉を開けて)やめてみんな!!」
夏「音葉!?」
生徒たち「音葉ちゃん!?」
夏「病院はもういいのか!?」
音葉「うん、大した怪我じゃなかったから」
「あのねみんな。昨日盛大にずっこけちゃって……それで大事をとって病院に行ってたの」
生徒D「……音葉ちゃん」
音葉「だから夏は関係ない!!」
「(笑顔で)心配してくれてありがとう。みんな」
――生徒たちがはけ、隣の席に座る音葉。
音葉「あの時、あの人は本気で私を踏んでなかった……」
夏「え?」
音葉「踏む直前に、力を緩めているのが分かったの」
夏「でも――」
音葉「私、ずっと張っていた緊張の糸が切れて……」
「(笑顔で)それであの時、倒れただけだから」
夏「だからって、お前を何度も踏んだ事実は変わらないだろ!?」
音葉「もういいの……終わったことなんだから」
夏「お前……そこまでして何で私を助けるんだよ?」
音葉「んーと。私ね、中学の時に、夏に助けてもらったことがあるの」
夏「え? 中学ってお前、東京から来たんじゃ?」
音葉「うん、こっちにおばあちゃん家があって、時々遊びに来てたんだ」
「それでね、私がナンパされて困っているところに、夏が現れて助けてくれたの」
夏「んー……覚えてないなー……」
音葉「でしょ? だって私、その時こんな感じだったから」
と、髪の毛を肩の前で二つ結びにし、夏のメガネをかける。
夏「あーっ!! 思い出した!!」
「あの時は私も無我夢中で……」
音葉「ふふっ。転校初日に夏を見て、あの時の人だってすぐに分かっちゃった」
「こんな偶然あるんだなーって、凄く嬉しかった」
「だからね、今度は私が夏を助けなきゃって――」
夏の回想終わり。