第一話 007
○夏の回想・同・敷地内(七月・午後)
並んで歩く夏と音葉。
夏服、手にはゴミ袋。
夏「あーあ、ゴミ出し当番めんどくせーなー」
音葉「文句言わないの」
鬼島「よお!! いっこ下!!」
と、後ろから。
夏「(振り向いて)ああ?」
――鬼島と不良B・Cの姿。
鬼島「もう学校に来れるようになったでか?」
夏「(ゴミ袋を置き)お前、いつの話してんだ? すっかり忘れちまったよ」
「――下がってろ冬月」
と、音葉を下げようと、片腕で制止。
が、腕を押しのけ、前に出る。
音葉「貴方たち何なんですか!?」
夏「ちょっと冬月!?」
鬼島「何だ知らねえのか?」
「そいつはあたしんちに暴力を振るって、停学処分になったでよ」
不良B「私んちも注意されたけどな」
鬼島「(不良Bに)しゃらうるせぇ!!」
音葉「でしたら、夏は停学処分で十分反省したじゃないですか!?」
鬼島「なーにょ言ってるだちゅう?」
「あたしんちはまだそいつに謝ってもらってねーだわ!!」
夏「お前ら!! あの後ちゃんと謝っただろ!?」
鬼島「あんなものは謝ったうちに入いんねーだわ」
不良B「なんぼでも言ってないで、とっとと誠意を見せろちゃー!?」
夏「何だとこらあああ!?」
前に出ようとする夏、音葉が片腕で制止。
音葉「分かりました。夏の代わりに私が謝ります」
と、ゴミ袋を置き、お辞儀。
音葉「だからもう夏のことは許してあげてください」
夏「ばっ!? 何言ってんだお前!?」
不良B「誠意っていえば土下座だろ普通よ!!」
――膝をつく音葉。
夏「やめろって!!」
――頭を下げる音葉。
鬼島「ほぅ……?」
と、音葉の頭を踏んで。
夏「おい冬月!?」
鬼島「(夏を見て)随分と仲間思いの友達ができたじゃねえか? われ」
夏「何やってんだ!! 頭を上げろよ!?」
不良B「(夏に対して)ほらほら、悔しかったら早く助けてもれー!? 暴・力・で」
不良C「そうらそうらー!!」
夏「てめーら!! 調子に――」
音葉、夏の足首を片手で掴む。
夏、ハッと音葉を見る。
音葉「(笑顔で)……大丈夫」
× × ×
鬼島「ほらほら、早く止めないとコイツうっちゅうぞ!?」
と、頭や背中を何度も踏みながら。
――グッとこらえる夏。
音葉の手は、夏の足を離さない。
× × ×
息を切らす鬼島。
音葉「(顔を上げて)気が済みましたか?」
「(睨んで)これ以上あなたたちが問題を起こせば、次は注意だけじゃ済まされませんよ!?」
鬼島「(怯んで)けっ、しゃら面倒くせぇ……とっととけえるぞ!!」
引き上げる三人。
――倒れる音葉。
夏「大丈夫か音葉!? しっかりしろ!!」
と、抱きかかえて。
音葉「(微笑んで)……良かった。夏がやっと親しく呼んでくれた……」
夏「……お前」