表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
第四話 『やりたいこと』
66/206

第四話 014

○お花見女子高等学校・校門(午後)

   音葉の鞄を持ち、下校する夏と音葉。

夏「音葉、今日はこの後ちょっと武道場に寄ってくわ」

音葉「分かった。行ってきていいよ、私はお母さんを待つだけだから」

夏「ありがとう。鞄ここに置いとくな? また明日!!」

   と、走っていく。


○同・武道場内

   奥の真ん中でイスに座る北川の前に立っている夏。

   ――腕組みをしたまま夏を睨む北川。後ろの壁には松葉杖。

   北川の横には他の部員たちが並んでいる。

夏「ウチが暴力事件を起こした時も、このまえ浅井と試合をした時も、自分の感情を抑えることが出来なかった」

 「……それはウチの心が弱かったから」

   ――武道場の隅に座り、寝ている教頭先生。

夏「空手を馬鹿にしていたのはウチの方だった!! (お辞儀)ごめんなさい」

   ――夏を睨んだままの北川。

夏「(顔を上げて)でもウチは、今の自分を変えたい!!」

 「山梨学園大学に受かって、大学でもう一度空手をやりたいって目標が見つかったんだ!!」

北川「そうか、でもその心の弱さがある限り――」

夏「『君子の拳』」

北川「え?」

夏「空手道の教えの通り、もう一度真剣に空手と向き合う」

 「だからウチを空手道部に入れてください!! よろしくお願いします!!」

   と、目を閉じてお辞儀。

春香「なっちゃん……」

加奈「夏先輩……」

真中「私からもお願いします!! 北川先輩!!」

春香・加奈「お願いします!!」

   と、お辞儀する三人。

   ――ため息をつき、松葉杖を片手に立ち上がる北川。

北川「あんたから『君子の拳』という言葉が出るとは思わなかった。……分かった」

   ――ハッ!! とお辞儀したまま目を開く夏。

北川「だから冬月さんも頭を上げて」

夏「え?」

   と、後ろを見る。

   ――お辞儀をしている音葉。両脇に松葉杖。

夏「うわっ!? いたのか音葉!?」

北川「あと、峰山先生も……」

   ――音葉の後ろで音葉の鞄を持ちながらお辞儀をしている峰山先生。

夏「って何でゴリ山まで!?」

峰山「いや……この流れだと、俺も頭を下げるべきなのかなーっと思って……」

音葉「北川さん、私も期間限定だけど、マネージャーとして空手道部に入れてください!!」

北川「ええっ!?」

夏「えええっ!?」

峰山「えええええっ!?」

夏「だからゴリ山は早く剣道部に戻れよ!!」

峰山「おおぅ……。鞄、ここに置いていくな? 冬月……」

   ――肩を落として剣道部に戻る峰山。

音葉「ありがとうございました先生」

   と、峰山に向かってお辞儀。

北川「(ため息をついて)分かった、二人とも空手道部への入部を認めよう」

   ――顔を見合わせる夏と音葉。

夏・音葉「ありがとうございます!!」

春香「やったー!!」

加奈「よかったですね、夏先輩!?」

   と、夏に駆け寄る二人。

夏「ハル、加奈、ありがとな。それからごめんな、ウチのために無理をさせちゃって」

春香「何言ってんのなっちゃん!! 無理なんかしてないよー?」

 「ハルも空手が少し出来るようになったんだよ!? えいっ!! えいっ!!」

   ――中段逆突きを見せる春香。

夏「ははは、もっと腰を入れろ!!」

   と、春香の腰をポンと叩いて。

真中「ありがとうございます、北川先輩!!」

北川「(夏を見て)もう一度だけ、あいつを信じてみようと思っただけだ」

真中「もう一度?」

北川「いや……何でもない」

音葉「あーっ!! 今気付いたけど」

 「(笑顔で)お揃いだね? これ」

   と、北川に松葉杖を見せて。

北川「今気付いたのか!?」

音葉「うふふっ」

みんな「あはははは」

夏「ほんと音葉は場を和ませる天才だな!?」

北川「誰かさんとは大違いだな?」

夏「はー!? 何だとこらー!?」

北川「おいおい、さっきまでの謙虚さはどこにいった?」

夏「お前が――」

恵介「遅くなってすみませーん!!」

   と、武道場に入ってくる恵介。空手着姿。

夏「兄貴!?」

みんな「え?」

恵介「えー、本日から期間限定でこの空手道部を指導します、(夏の頭に手を置いて)こいつの兄、立花 恵介です」

 「あ、ちなみに過去に全日本を二連覇しましたー。よろしくお願いしまーす」

みんな「うおおおお!!」

恵介「あー、それと学校には事情を説明して、(教頭先生を見て)教頭先生からも許可を得てありますので」

夏「でもどうして兄貴が?」

恵介「(咳払いをして)ここではコーチと呼ぶように」

 「ほうとう杯は団体戦だ、お前一人だけが頑張っても仕方ないだろ?」

夏「確かに……」

恵介「よーしみんなー!! みんなで強くなって、ほうとう杯、絶対に優勝するぞー!!」

みんな「おおー!!」

恵介「で、早速だけど、みんな今週末からGWだよなー?」

みんな「はい!!」

恵介「みんな予定がびっしり詰まってるよなー?」

みんな「はい!!」

恵介「よーし分かった。じゃあGWに合宿を行う!!」

みんな「はいいいい!?」

恵介「いいですよね!? 教頭先生!?」

   ハッ!! と、全員で一斉に教頭先生を見る。

   隅っこでぷるぷると体を震わせ、笑顔で親指を立てる教頭先生。

みんな「えええええーっ!!」

   ――みんなの声が空に響く。


――終わり――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ