第一話 006
○夏の回想・お花見女子高等学校・夏のクラス(六月・朝~休み時間~昼休み)
黒板隅の日付は六月。
真ん中に『冬月 音葉』の文字。
音葉「冬月 音葉です。よろしくお願いします」
と、教壇横で微笑む冬月 音葉【ふゆつき おとは】(高一・16)。
みんな「(ざわついて)チョー可愛いー!!」
夏、興味がなさそうに、目を逸らす。
ふちメガネ姿・膝上スカート。
――音葉、夏を見て、ハッ!?
担任「えー、冬月の席は……立花の隣だな」
みんな「(ざわついて)うわー、よりによって……可愛そう」
音葉「(隣の席から微笑んで)よろしくね? 立花さん」
夏「(目を逸らして)お、おう……」
× × ×
休み時間。
夏の耳に入るところで、音葉と話すみんな。
生徒D「音葉ちゃん、あいつと関わったらダメだからね」
音葉「どうして?」
生徒E「立花 夏、前に暴力事件を起こして停学してたの」
「その後もトラブルばかり起こしてるから、あの子と関わると音葉ちゃんも巻き込まれちゃうよ?」
音葉「(夏を見て)うふふっ、大丈夫だって」
× × ×
昼休み。
音葉「(隣の席から覗き込んで)立花さん、一緒にお弁当食べよ?」
夏「(目を逸らして)いいよ、早弁したし」
音葉「えー!? お腹すかない? はい、あーん」
と、おかずを箸で、食べさせようとする。
夏「(音葉を見て)だから要らないって言って――」
「! ええっ!? 寝てるし!?」
――箸を向けたまま眠る音葉。
夏「大丈夫!? 冬月さん!?」
音葉「! あっ、ごめんね!?」
「(笑顔で)私、どこでも寝ちゃう癖があって」
夏「大丈夫かよそれ……」
音葉「あっ!! 一句思い付いちゃった!!」
夏「何!? 急に」
音葉「『学校に 枕持参で 眠りたい ―音葉―』」
夏「いやダメだろそれ!?」
音葉「うふふっ。立花さんって真面目なんだねー?」
夏「(目を逸らして)別に……」
音葉「ねぇ立花さん。『夏』って呼んでいい?」
夏「……勝手にしろ」
音葉「やったー!! じゃあ夏も私のこと、『音葉』って呼んでね!?」
夏「(頭を抑えて)つっ!!」
「――知らねーよ!! 私はもう誰も信じねーんだよ!!」
と、立ち上がり、出ていく。
× × ×
夏N「そしてウチは、しつこく話しかけてくる音葉に対して、少しずつ心を開くようになっていった――」
[教室で「夏、一緒に帰ろ?」と、話しかける音葉]
[教室で「夏、一緒にパズルやろう?」と、富士山のパズルを見せる音葉]
[教室で「夏、一緒に昼寝しよう?」と、隣の席から眠たそうに話しかける音葉]
夏N「――そんな矢先」