第一話 005
○同・昇降口の上にある時計~三年の廊下~説教部屋前の廊下~屋上のドア前スペース(午後)
15時。授業終了のチャイム。
廊下を歩く夏、加奈、後ろに春香。背中に鞄。
生徒たち、慌てて端によける。
夏「ここが三年生の教室なー」
加奈「何だか皆さん、怯えているような……」
夏「まぁ細かいことは気にするな!!」
× × ×
夏「で、ここが説教部屋。今日もあの後、小一時間ほどゴリ山の演説を聞かされたよ」
加奈「ははは……」
夏「(振り向いて)誰かさんが裏切ったせいで」
春香「ごめんねなっちゃん!! 今日、日直当番だったの!!」
「ハルはいっつも、号令と学級日誌を出すことだけはちゃんとしてるんだよ!?」
夏「それだけかい!!」
春香「てへへ……」
夏「まあいいや。えーっと次は……」
春香「ねーねーなっちゃん、さっきから何で校内を案内してるのー?」
「かなちゃんは町を案内して欲しいって言ったんだよ?」
夏「まあまあ春香さん、町を一望できる場所がここにもあるじゃないですか?」
× × ×
屋上のドア前スペースに到着。
春香「あー、屋上があったかー」
夏、取手に手をかけて。
夏「よし加奈!! 思う存分、町の景色を堪能しろ!!」
と、勢いよく。
――ガチャガチャ。
夏「あれ……?」
――ガチャガチャガチャ。
三人「……」
夏「うっそーん!?」
春香「開いてるわけないよー……漫画じゃあるまいし」
夏「フッ、あっはっはっはっは」
と、腰に手を当てながら。
夏「(優しい顔で振り向いて)加奈、ウチら頼りないけど、困ったことがあれば何でも言ってくれ……」
加奈「えっ」
夏「(手を差し出して)一緒に楽しい思い出、作ろうぜ」
加奈「……はい?」
夏「えええーっ!?」
春香「ほらー、だから言ったのにー。なっちゃんはいっつも強引すぎるんだってー」
「しかもかなちゃんの頼みごと、まだ何にも解決してないしー」
夏「ばっ!! ウチだって音葉との約束を守るために、一生懸命やってんだ!!」
加奈「約束?」
春香「あっ、言っちゃったー……」
――夏、口を押さえる。
加奈「(怪訝な顔で)……」
夏、あぐらをかいて。
夏「……そうだよ!! 口うるさい友達との約束だったんだよ」
「『一年に一人、友達を作る』って……」
× × ×
夏「ウチが一年のころ、暴力事件を起こして停学処分になったんだ」
加奈「暴力って……!?」
春香「あー、なっちゃんが絡まれて仕方なくだよー?」
夏の隣に春香、向かい合って座っている加奈。
夏「相手が不良だろうが、ウチが手を出した事実は変わらない……」
加奈「それでその後、どうなったんですか?」
夏「学校に戻ったら、『ウチと関わったら危険だ』って噂になっていて、学年から孤立していった」
加奈「(神妙な面持ちで)……」
夏「でもそんなある日、あいつが転校してきたんだ――」