第三話 013
○同・特設ステージ
司会「お二人ともお幸せにー!! さー、どんどん行きましょう!!」
「次は河口 湖太郎さんと立花 夏さんのお二人です!!」
春香「おっ、なっちゃんの番だ!!」
と、ステージ下から。隣に加奈。
加奈「いよいよ湖太郎さんが夏先輩に告白するんですね!?」
春香「もしかしたらここで、感動のドラマが生まれるかもしれないよ!?」
加奈「うんうん!!」
――ステージに立つ二人。
ウキウキの湖太郎と、やる気の無い夏。
春香「なっちゃーん!!」
加奈「夏せんぱーい!!」
――歓声と拍手で沸く観客。
湖太郎「なっちゃん!! 僕は心から君のことを大切に思っている!!」
「僕と、お付き合い、よろしくお願いします!!」
と、夏に手を差し出しお辞儀。
春香「告白した―!!」
加奈「ワクワク」
夏「つっ!!」
と、頭を抑える。
――静まり返る観客。
夏の前に幻影が現れる。
[周りは黒い空間]
夏の幻影「付き合っちゃえばいいじゃない?」
「今まで散々いじめられて、誰からも相手にされず、そんなあなたを心から大切に思ってくれてるんだよ?」
――夏の反応がなく、ざわつく観客。
湖太郎は目を閉じてお辞儀のまま。
春香「どうしたんだろうなっちゃん……」
加奈「自分の気持ちと葛藤してるんですかね……」
夏の幻影「あなたと付き合う男性は覚悟がどうとか言ってたけど、そんなの自分から壁を作っているだけでしょ?」
――無言の夏。
[以下、夏の表情は写さない]
夏の幻影「そんな壁、ぶち壊しちゃって外の世界に飛び出せば、そこにはきっと、新しい世界が広がってるんだよ!?」
と、笑みを浮かべて夏に手を差し伸べ、もう片方の手で後ろを指し、その先に眩い光を見せる。
夏「(軽くため息をついて)そうだな……」
と、幻影の手を握ろうと手を伸ばして。
が、目の前に小さなカメがポツンと出てくる。
ハッ!? と、夏の手が止まる。
夏「……花子」
[ホワイトアウト]
× × ×
夏「……湖太郎」
湖太郎「はい……」
と、顔を上げて。
夏「(少し照れた優しい表情で)ほら、ウチって不器用だから、一つのことしか出来なくってさ……」
「だから、友達と一緒に笑ったり、泣いたり、怒られたり、そういう時間を大切にしたいんだ」
――春香の表情、加奈の表情、富士山パズルにピースをはめ込む音葉の表情を写す。
湖太郎「夏ちゃん……」
夏「(お辞儀)だからごめんなさい……」
湖太郎「そっか……分かった」
と、手を引っ込めて。
――「どんまーい」「良く頑張ったぞー」と観客の声援と拍手。
夏「(顔を上げて)でもありがとう!! こんな、何の取り柄もないウチを好きになってくれて!!」
「これ、カメさんキーホルダーのお返し」
と、包装紙に包まれたお土産を渡す。
湖太郎「(受け取って)ありがとう夏ちゃん……」




