第三話 009
○同・河口湖畔
――湖畔に人だかりができている。
人だかりの真ん中で、三人の若者たちが野良猫のしっぽを掴み、持ち上げている。
「ニャー」と泣きながら必死に抵抗する野良猫。
若者A「いえーい!! こいつまたまたゲットだぜー!!」
若者B「くそー、またお前が捕まえたのかよー?」
若者C「こいつ馬鹿だから餌で釣ったらちょろいもんだよな!?」
若者たち「あはははー」
――人だかりにまじり、その光景を見ている夏。
グッと拳を握る。
湖太郎「もー、夏ちゃんいきなり走り出すんだからー」
と、夏の後ろに駆けつける三人。
夏「おい湖太郎。あの猫助けてこい」
[以下、夏の表情は写さない]
湖太郎「えええっ!? 僕が!?」
夏「ああ」
湖太郎「いや夏ちゃん? いくら相手がガキんちょだからって、向こうは三人だよ!?」
「もし喧嘩とかになったら、おニューのスーツも汚れちゃうし……放っておくのが一番だよ!!」
「ねっ!? ねっ!?」
と、動揺しながら。
夏「しゃあねえな……」
夏、湖太郎の肩をガッと掴んで。
夏「ああいう奴らが一番むかつくんだよ……」
と、凄いけんまくで若者たちを睨みつける。
湖太郎「(夏の表情を見て)えっ!?」
――夏、若者たちを止めに行こうと前に出る。
湖太郎「ちょっと夏ちゃん!?」
――が、夏より先に峰山が若者たちのところに止めに入る。
夏「えっ!?」
峰山「こおおおらお前らあああ!! なーにをやっている!!」
若者A「あん? 何だおっさん?」
若者B「怪我してーのかー!?」
若者C「やめときなよー? 折角のピカピカスーツが台無しになっちゃうよー?」
峰山「やれるものならやってみろおおお!!」
と、一喝。
若者たち「ひっ!! すっ、すみませんでした!!」
腰を抜かし、猫を離して逃げていく若者たち。
峰山「大丈夫か?」
と、しゃがんで猫の頭をなでながら。
「ニャー」と、お腹を見せて安心した様子の猫。
――人だかりがはけていく。
峰山の隣にしゃがむ知恵。
知恵「(ため息)もう、あまり無茶しないでよ先輩……」
峰山「お祭り気分で気持ちが高ぶっていたんだろうが、間違ったことは誰かがちゃんと注意しなければな」
知恵「うふふっ。昔から変わらないね? その正義感――」