第三話 004
○お花見女子高等学校・廊下(昼休み)
峰山の後ろを歩く、鞄を背負った夏。
夏「ゴリ山ー、ちょっと話があるんだけどー」
峰山「(振り向いて)何だ立花か。昼休みは校内の見回りで忙しいんだ、すまんな」
夏「じゃあ今からウチを説教部屋に連れてってくれよ?」
峰山「なっ!? どうしたお前、自分から説教部屋を指名するなんて……頭でも打ったか?」
夏「打ってねえよ!!」
峰山「却下だ。理由も無く説教をするのは、俺のポリシーに反する!!」
夏「ゴリ山は好きな人いるのかー?」
峰山「まあそうだな……。って、どうした急に!?」
夏「ゴリ山は年下好きかー?」
と、メモをとりながら。
峰山「まあそうだな……。って、人の話を聞けー!!」
夏「だから年下の女性は好きか? って聞いてんの!!」
峰山「お前に答える義務は無い!!」
夏「何だよケチ。ほら、バナナやるから」
と、バナナを一本差し出して。
峰山「馬鹿にしてるのかお前はああ!!」
夏「ノックの知恵姉からだよ」
峰山「河口から!? ……ならいただいておく」
と、買い物袋を受け取って。
夏「えーっと、知恵姉に対して『馬鹿にしてるのかお前は』っと」
と、メモをとりながら。
峰山「こらこらこらー!!」
夏「知恵姉、ゴリ山が最近ぜんぜん顔を出さないって寂しそうにしてたぞ?」
峰山「そっ、そうか……」
夏「ほらー、知恵姉からの差し入れをちゃんと渡したんだからさー、質問に答えろよなー? 年下が好きなのかどうか」
峰山「くっ……。まっ、まあ好きということにしておこう……」
夏「(メモしながら)えー『ロリコン』っと――」
峰山「ちがーう!!」
夏「ま、とりあえず今日はこれでいいや。じゃあな!!」
と、手を上げ立ち去る。
峰山「まったく、何を企んでいるんだあいつは……」
○冬月家・全景(夕)
古さを感じさせる一軒家。
○同・二階の音葉の部屋
夏「音葉も自宅療養になったから、これからは毎日顔を出し辛くなるな?」
と、ベッドにもたれながら。制服姿。
音葉「私が学校に戻れるまで、交換日記は毎日じゃなくてもいいよ? 夏にも自分の時間があるんだから」
と、夏の隣に座りながら。私服姿。
手元には松葉杖。
夏「まぁお前がそう言うならそれでいいんだけど……」
「ところで音葉さん。思い出せないかもしれないけど……」
「その……ゴリ山から……」
と、顔を赤らめて。
音葉「(笑顔で)どうしたの?」
夏「あ、いや……音葉がゴリ山から告白されたとかってこと、あるわけないよなー? って……」
「あはははは……」
と、上目遣いで表情をうかがう。
音葉「(考え込んで)んー……」
夏「まさか……」
音葉「(笑顔で)流石にそれはないかなー」
夏「(ため息をついて)だよなー」
「じゃあ音葉からゴリ山に告白したことも?」
音葉「あーっ!!」
夏「えっ!? あるの!?」
音葉「いや、ないんだけど、峰山先生のことで少し思い出した!!」
夏「えっ、何を?」
音葉「この約束事を考えたとき、つまり高校一年の十月のこと」
夏「ほんとか?」
音葉「この時は大会直前だったのに、峰山先生がぼーっとしていて、みんな練習に身が入らなかったの……」
夏「ほうほう」
音葉「でも峰山先生についてどうしたかったのかとか、この夏と関係ない約束事がなぜ消されているのか」
「まだはっきりと思い出せないかなー?」
夏「まてよ? ゴリ山がノックに行かなくなった時期が、今の話と一致するとなると……」
「さてはあいつ、知恵姉と何かあったな?」
音葉「……かな?」
夏「明日またゴリ山に聞いてみるかー」




