第二話 012
○走行中の車(18時頃)
道路を走る、マスタング シェルビー GT500。
○同・車内
加奈の父「こうやって加奈と二人で帰ったのは、保育園以来だな?」
と、運転しながら。スーツ姿。
助手席に加奈。
加奈「え?」
○加奈の父の回想・保育園の教室内~道路(18時頃)
加奈の父「すみません、秋園です」
と、顔を出す。
加奈「パパー!!」
駆け寄る、四才の加奈。
加奈の父「(抱きかかえて)加奈」
× × ×
加奈「パパ、お仕事早く終わったの?」
と、道路を歩きながら。
加奈の父「うん、そうだよ」
加奈「パパ、ちゃんと手をつながないと危ないんだよ?」
「車いっぱい通ってるんだから」
と、加奈から手をつないで。
加奈の父「ははは……そうだな」
加奈の父の回想終わり。
○元の車内
加奈「覚えてたんだ……」
加奈の父「当たり前だ。加奈と過ごした時間を、忘れたことはないよ」
「加奈、あのとき単身赴任って形になってごめんな……」
「お前が新記録を出したよって電話くれた時も、仕事を優先して、ゆっくりと話せなくて悪かった」
加奈「ううん、それはもういいの……」
――沈黙。
加奈「お父さん、あのね!! 私――」
加奈の父「お父さん、戦隊モノのヒーローに憧れて医者になったんだ」
加奈「え?」
加奈の父「ヒーローみたいに戦えなくても、困っている人を助けられるから……」
「でも一番守らなきゃいけない家族の事を、守れていなかった」
「お前とちゃんと向き合えていなかった……」
「一人で辛い思いをさせてごめんな、加奈」
加奈「(首をふって)ううん」
「私も変に意地張っちゃって、お父さんと話すの避けてた……ごめんなさい」
加奈の父「いや、お父さんが全部悪かった!!」
加奈「そんなことない、私の方が!!」
二人「――ぷっ。あはははは」
× × ×
加奈「ねぇお父さん」
加奈の父「ん?」
加奈「誰かを助ける仕事ってかっこいいね? 音葉先輩を応援するお父さんを見て、少し嬉しくなったんだ」
加奈の父「え?」
加奈「(微笑んで)私も誰かを助けられる仕事に就けたらなーって……」
加奈の父「加奈……」
――赤信号で停車。
加奈「やっぱ私、お父さんの娘だね。お父さんにソックリ」
加奈の父「フッ、イケメンになるぞー?」
加奈「女の子なのにイケメンって……」
「ぷっ」
と、吹きだして。
加奈の父「どうした?」
加奈「お父さんも冗談言えるんだなーって」
加奈の父「言ったこと無かったっけ? じゃあとっておきのおやじギャグを――」
加奈「(真顔)それはいい」
加奈の父「おおう……」
――青信号になり、発車。
加奈の父「立花さんだっけ? 彼女にガツンと言われなければ、こうやって前には進めなかった」
加奈「え?」
加奈の父「強引で、負けず嫌いで、ズカズカとものを言う」
「でも彼女の言葉は、しっかりと的を得ている……いい友達を持ったな?」
加奈「うん!!」