第二話 009
○同・音葉の病室
音葉「美味しい!!」
布団を掛けたままベッドに座り、イチゴを食べる音葉。病衣姿。
その横に立つ春香、夏、加奈。
夏「だろー!? 音葉のために、みんなで採ったんだ」
音葉「(ニコッ)ありがとうみんな」
春香・加奈「えへへ……」
音葉「すごく柔らかい味で、ハルちゃん家の愛情が、しっかりと込められている」
春香「そう言われると、何か照れちゃうなー」
音葉「うふふっ、一句思いついちゃった」
「『愛こめる イチゴも人も 同じかな? ―音葉―』」
と、加奈を見て。
加奈「えっ?」
音葉「秋園先生ね、加奈ちゃんが区間新記録を出したとき、病院のみんなに自慢して回ってたのよ?」
「すごく嬉しそうな顔で、まるで自分の事のように」
加奈「そうだったんですか……」
――加奈の肩を優しく叩く夏。
少し嬉しそうな顔を見せる加奈。
音葉「私がこの約束事を考えた時も、夏が家族と喧嘩ばかりしていた時期だったの」
夏「! 音葉!? もしかして記憶が戻った?」
音葉「うん、高校一年生の九月の記憶、思い出した」
と、富士山パズルにピースをはめて。
夏「あれ? 約束事って……」
音葉「ほら」
と、交換日記の表3を開いて。
音葉「ステップ2の1、『家族について考える』」
夏「ホントだ!? 確かに家族について考えたもんな!? 加奈の家族だけど」
春香「やったねなっちゃん!?」
加奈「一歩前進しましたね!?」
夏「おう!!」
音葉「うふふ」
× × ×
夏「じゃあまた明日なー」
春香「バイバイ音葉ちゃーん」
加奈「失礼します」
音葉「うん、イチゴご馳走様。気をつけて帰ってね」
○同・廊下
春香「じゃあGKT呼ぼっかー」
夏「おう」
加奈「夏先輩!!」
夏「ん?」
加奈「私、お父さんと一緒に帰りたい……」
「お父さんとちゃんと話をして、私も夏先輩みたいに、しっかりと前を向きます!!」
夏「――そっか」
「加奈、自分の素直な気持ちを伝えれば、お父さんもきっと分かってくれるから!!」
加奈「はい、ありがとうございます!!」
夏「じゃあまた明日なー」
春香「バイバイかなちゃーん」
加奈「気をつけてー」
× × ×
夏「帰りはお前が助手席なー?」
春香「そこはジャンケンで決めようよー」
夏「えー」
――二人の背中を、優しく見つめる加奈。




