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ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
第二話 『イチゴも人も』
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第二話 005

望美「ほんと、家のお姉ちゃんは昔っから人任せなんだからー」

   と、顔を出して。

夏「おっ、望美。手伝いは大丈夫なのか?」

望美「はい、ちょっと休憩に」

春香「ほんと、家の妹は昔っから休憩が多いんだからー」

   と、口調を真似して。

望美「何もしてないお姉ちゃんに言われたくない!!」

春香「てへっ」

望美「昔っからこうなんですよー……お姉ちゃんは」

 「私が小学一年生の時も、畑を手伝おうって言われてついて行ったら、一人で勝手にいなくなっちゃって」

夏「ほうほう」

望美「そのあと、家族みんなで探し回っても全然見つからなくって」

 「みんな肩を落として家に戻ったら、花冠をいっぱい持って玄関に立ってたり」

夏「おおう……」

春香「ちゃんとみんなの分も作ったんだよー?」

望美「そういう問題じゃない!! こっちはいつもお姉ちゃんに振り回されてばっかり!!」

   春香の肩を、ポンと叩く夏。

夏「何か他人事に聞こえなくって同情するよ……」

春香「(泣きながら)ありがとうなっちゃん……」

加奈「でもみなさん、いい人ばかりですっごく温かい家庭ですね!?」

望美「そう? 加奈ちゃんの家は温かくないの?」

加奈「えっ!? いや、別に……望美ちゃん家ほどじゃないけど……」

望美「(笑いながら)家ってそんなに温かい家庭なのかなー?」

春香「ハルがいるから当然じゃない?」

望美「だからお姉ちゃんは違う意味で――」

   ――二人を見てうつむく加奈。

   その様子を見ている夏。

加奈М「嘘つき……」

夏「加奈」

加奈「ふぇっ!?」

夏「(優しい顔で)話してみろよ? 隠しごと無しでさ」

加奈「で、でも私、何も――」

夏「水臭いなー? 友達だろ? まぁ無理に話さなくてもいいけど」

加奈「……ですよね。ありがとうございます夏先輩。聞いてもらえますか?」

夏「おうよ」

加奈「私が中学一年生のころ、お父さんが単身赴任でこっちに引っ越しちゃって」

 「家に帰ってもお母さんと二人っきりだったんです」

 「毎晩仕事で疲れて帰ってくるお母さんを見て、私はずっといい子を演じてました……」

夏「自分の家なのに、安らげなかったのかー」

加奈「(頷いて)だから中学では、ただひたすら部活に打ち込んで、ずっと走ってました」

 「気が付けば中学最後の大会で、区間新記録を出していました……」

春香「おおう……いま何気に自慢話が入った……」

加奈「でも私は全然嬉しくなかった。そこには虚しさしかなかった」

夏「その場に両親がいなかったから?」

加奈「(頷いて)後から、頑張ったねって褒めてもらったけど、私は走っている姿を見て欲しかった」

 「仕事よりも、成長した自分を見て欲しかった」

春香「でも今はかなちゃんも引っ越してきて、みんなで住めるようになったんだよね?」

加奈「一緒に住めるようになったからって、人のライフスタイルはすぐに変わりません」

 「お母さんは仕事を辞めてから、前より私を気遣ってくれますが……」

 「お父さんは相変わらず仕事優先で、休みの日も書斎に閉じこもったまんま」

夏「たぶん加奈は、もっとお父さんの愛情が欲しかったんだな……」

加奈「あっ、すみません!! 暗い話になっちゃって……」

望美「人それぞれ、家庭の悩みがあるんだねー?」

 「加奈ちゃんの悩みごとに比べたら、私のお姉ちゃんの悩みごとなんてミジンコ以下だね」

春香「ミジンコ以下って何だよー!?」

夏「こんど機会があったら、加奈のお父さんに会ってみたいな」

春香「またー、人の家庭の事情に首を突っ込んだら、話がややこしくなっちゃうよー?」

夏「分かってる。でもウチは、今の加奈の状況をほおってはおけない」

加奈「夏先輩……(照れて)ありがとうございます!!」

   と、凄い勢いで、イチゴを採って食べる。

夏「だからヘタごと食ってるぞー……」

春香「ほんと、なっちゃんはやると決めたら、何言っても聞かないんだからー」

望美「お姉ちゃんもね」

春香「おおう……」

夏「(肩を叩いて)分かるよ、お前の気持ち……」

春香「(泣きながら)ありがとうなっちゃん……」

加奈「私、今まで家族で出かけたりする事がなくって」

 「だからせめて知識だけでもって、色々調べる癖が付いちゃって……」

 「でもこうやって、実際に体験してみると全然違いますね!? すっごく楽しかったです!!」

夏「おお、それは良かった!!」

春香「何でもやってみるのが一番!!」

望美「畑の手伝いもね」

春香「おおう……」

春香の母「みんな時間大丈夫? そろそろ病院に行かないと、帰りが遅くなっちゃうわよ?」

   と、顔を出して。

夏「あっ、やべっ!!」

拓蔵「良かったら病院まで送ってってやるぞ?」

   と、顔を出して。

拓蔵「(親指を立てて)俺のGKTで!!」

夏「いえ、そこまでしてもらうと何だか悪いですよ」

拓蔵「困ったときはお互い様だろ? 送っていくぜ!? 俺のGKTで!!」

   と、親指で後ろを指す。

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