第二話 004
○同・ビニールハウス~ハウス内
畑の一角に、八棟のビニールハウス。
春香「それにしても、かなちゃんと望美が同じクラスだったなんてー」
加奈「なんだか世の中、広いようで狭いですね?」
と、ハウス内でパックを手に持ち、しゃがみながら。
夏「あまーい!!」
加奈の隣でしゃがみ、イチゴをほおばる。
――ハウス内には、四列に植えられたイチゴ。
夏「加奈も食べてみろ、すんごく甘いぞ!!」
加奈「(かじって)本当だ、すっごく美味しいです!!」
春香「うちの野菜や果物は、この辺の旅館に出荷してるからねー。味の方は折り紙付きだよー」
春香の母「うふふ、じゃあいっぱい食べてってねー」
と、ハウスを出ていく。
夏・加奈「ありがとうございます!!」
× × ×
夏「よーし、腹一杯になったし、音葉のためにおっきなやついっぱい採るぞー!!」
と、パックを掲げて。
春香「ハルもハルもー!!」
加奈「私も頑張ります!!」
夏「よし分かった、じゃあ誰が一番大きいやつを採れるか、今から勝負だ!!」
加奈「ふぇえっ!?」
夏「いくぞー!?」
三人、真剣な表情。パックを構える。
夏「よーい、ドン!!」
× × ×
[イチゴをいっぱい採っていく三人]
[ミツバチに追いかけられる、夏と春香]
[虫眼鏡でイチゴを観察する加奈]
× × ×
夏「よーし、じゃあせーので見せるぞー!!」
三人「せーのでドーン!!」
と、手の平に乗せたイチゴを見せ合って。
――春香、御光が差す中、イチゴ突き上げる。
夏「くそー!!」
と、地面を叩き悔しがる。
奥には、四つん這いの加奈。
春香「へへー、ハルだってやる時はやるのだー!!」
と、採ったイチゴを食べて。
夏・加奈「ああっ!!」
夏「お前、音葉への差し入れを何食ってんだよ!?」
春香「へっ!?」
「あーっ!! 差し入れのことすっかり忘れてたー!!」
夏「まったく……」
春香「でもこれ、全然甘くないよー?」
夏「おいおい……(食べて)そんなことあるわけ――」
加奈「(夏を見て)ええっ!?」
夏「あ、ほんとだ……さっきのやつより甘くない」
春香「でしょー?」
加奈「イチゴは、大きいから甘いってわけじゃないんですよ」
夏・春香「そうなのー!?」
加奈「ヘタの色が濃くって、実の色がヘタのところまで赤いものが、甘いらしいですよ?」
夏・春香「へー」
加奈「それにこれ」
と、夏のパックに入った、茎のついたイチゴを指差して。
加奈「二人とも豪快に茎ごと採ってますけど、ここを挟んで、爪で切ると――」
と、イチゴのヘタの上の茎を、親指と人差し指で挟み、切る。
加奈「ほら!!」
夏・春香「おおー!! すごーい!!」
夏「ウチもウチもー!!」
「おおおおお!! 綺麗に採れたー!!」
春香「おおう、知らなかった……」
夏「農家の娘が知らなかったんかい!!」
春香「(照れて)いやー、今まで第六感で採ってたからー」
加奈「ある意味超人的ですよそれ!?」
夏「それにしても加奈って、すんげー物知りだな!?」
加奈「いえ、気になることはつい調べちゃう癖がありまして、そのせいか知識だけは豊富で」
夏「ウチにはめんどくさくて真似できないなー」
春香「ハルもー」
加奈「ふえっ!? そ、そんな……」
「(照れて)もー、褒めても何も出ませんよ!?」
と、凄い勢いで、イチゴを採って食べる。
夏「おーい、ヘタごと食ってるぞー……」
春香「これから家のイチゴ畑は、かなちゃんがいるから安泰だね!?」
加奈「ふええっ!?」
夏「いやお前が頑張れよ」
春香「てへへ」
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