第二話 003
○同・校庭~通学路
夏「いやー、今日もゴリ山の演説長かったなー」
並んで歩く夏、春香、加奈。
春香「なっちゃんが早弁を、少しだけ我慢したらいいんだよー」
夏「ウチにとって学校とは、空腹との戦いの場である!!」
春香「なーにカッコ良いこといってるのー」
加奈「何だかその気持ち、少し分かります!!」
夏「だろー?」
春香「まー、ハルにとって学校は、睡魔との戦いの場なんだけどねー」
夏「それこそ少しは我慢しろよー」
春香「体が休みなさい!! って言ってるんだから、仕方ないよー」
加奈「何だかそれも、少し分かります!!」
春香「だよねー?」
夏「加奈も授業中に、早弁や居眠りをしたりするのか?」
加奈「んー……無いですね。でも考えごとはたまに……」
春香「かなちゃん真面目だねー?」
加奈「ふぇっ!? そんな事ないですよ!!」
夏「今までは、頼りない二人しかいなかったからなー」
「しっかり者の加奈を紹介したら、きっと音葉も安心するな?」
春香「そんな事ないよー、ハルだってやる時はやるんだから!!」
加奈「ははは……」
× × ×
通学路を歩く三人。
加奈「あっ、そういえば、お見舞い品を用意しないとダメですよね!?」
夏「大丈夫だって。ウチなんて毎日顔出してんだから、そんな大げさに考えなくても――」
加奈「(夏を覗き込んで)ダメです!!」
「私、音葉先輩と初めて会うわけですから、こういったことはちゃんとしないと!!」
夏「うっ……そう言われてもなー」
加奈「やっぱり私、何か買います!!」
夏「いやいやいや、そんな――」
春香「じゃあハルの家に寄って、イチゴを持っていこうよー?」
夏「おっ、それいいな!?」
加奈「イチゴ……?」
○霧島家・敷地内
広い敷地内に、倉庫を含めて五棟の建物。
加奈「わー、ここがハルちゃん家!?」
春香「そだよー」
加奈「すっごく大きいですね!?」
夏「ハルの家は農家だからなー」
春香「みんな畑に出てるみたい」
と、玄関を覗き込んで。
○同・家の裏の畑
広大な畑を歩く三人。
拓蔵「お帰りハルー!!」
と、手を振る春香の父、霧島 拓蔵【きりしま たくぞう】(43)。
畑用の作業服姿。
春香「ただいま父ちゃーん!!」
拓蔵「おっ、夏ちゃん久しぶり!!」
夏「(軽く会釈して)お久しぶりです、おじさん」
拓蔵「しばらく見ないうちに、また大きくなったんじゃねぇか?」
夏「え?」
拓蔵「(ニッ)胸が」
と、親指を立てて。
夏「ははは……」
拓蔵「まあ、家の母ちゃんに比べたらまだまだ――」
バシーン! と、拓蔵の頭を後ろから叩く、春香の母(40)。
畑用の作業服姿。
春香の母「しょうもないこと言ってないで、早く仕事しなさい!!」
拓蔵「へーい」
と、頭をさすり、作業に戻る。
春香の母「(加奈を見て)あら!? 学校のお友達?」
加奈「一年の秋園 加奈です!! よろしくお願いします!!」
春香の母「一年生だったら、うちの望美と同い年じゃない?」
加奈「え……?」
春香「望美帰ってるのー?」
春香の母「もうとっくに畑の手伝いしてるわよ」
「(振り向いて)望美ー!!」
望美「はーい!!」
と、腰を上げ、母を見る霧島 望美【きりしま のぞみ】(16)。
畑用の作業服姿。
春香の母「今日は家に遊びに?」
春香「あー、これから音葉ちゃんの病院に行くから、イチゴを差し入れよっかなーと」
春香の母「じゃあ折角だから、みんなでイチゴ狩りしていきなよ!?」
夏「あ、いえそんな、音葉の分だけ少しいただければ――」
春香の母「いいのいいの、遠慮しないでたくさん食べてって」
「春香がいつもお世話になってるんだから」
春香「てへへ」
夏・加奈「ありがとうございます!!」
望美「もー!! お姉ちゃんもちょっとは家の手伝いしなよ!?」
と、腰に手を当て、歩いてくる。
春香の母「望美と同じ学年なんだって、秋園さん」
望美「あ、こんにちは」
加奈「こんにちは……」
――無言で見つめ合う二人。
加奈・望美「あーっ!!」
と、指を指し合って。




