番外編 010
○同・外観~廊下のロビーソファー(夕)
――夕日に染まるお月見総合病院。
廊下のロビーソファーに並んで座る夏と孝一。
目の前、窓の外に広がる一面の銀世界。
――窓から夕日が差し込んでいる。
孝一「今まで自分に自信が持てなかったのかもしれません」
「それを隠すために、マイペースな冬子を心のどこかで馬鹿にして……」
「でも分娩室で、一生懸命がんばる彼女を見て……ああ、馬鹿なのは僕のほうだったって……」
夏「(優しい顔で)女性って、男性が考えているよりずっとずっと強いんです」
「ウチのお袋なんて怒ったら怖い怖い」
孝一「(頷いて)改めて、冬子のお母さんのお墓参りに行ってきます」
「――結婚の報告も兼ねて」
夏「うん」
× × ×
孝一「でもどうして、他人の私たちにここまで……?」
――少し目を閉じ、ゆっくりと開く夏。
夏「高校を卒業して新しい生活を始める時に、大切な友達から言われたんです」
「『これからも人に感謝される存在でいてね。約束だよ夏』」
「『きっとその時、景色が変わるから』って……」
孝一「景色か……」
――窓の外を見つめる二人。
孝一「僕もこの年になって、恥ずかしながら立花さんに気付かされました」
「人を信じて、そして心の底から愛すること……」
× × ×
夏「この真っ白な世界に――三人の足跡を」
「(笑顔で)これからいっぱいいっぱい残していって下さい!!」
孝一「(鼻水を垂らして泣きながら)はひっ……」
――泣きじゃくる孝一と慌ててハンカチを渡す夏。




