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ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
番外編 『あれから一年』
199/206

番外編 009

○同・個室前の廊下

   廊下で立って話す夏と孝一。

孝一「ここまで付き添ってくれてありがとう、立花さん」

 「でも正直、今でもまだ本当に自分の子かどうか、という迷いは少し残っています……」

夏「さっきの癖の話ですが……」

孝一「良い方向に働くこともあるって?」

夏「(頷いて)救急車を呼ぶ時に、冬子さんの鞄の中を見たんです」

 「……ビックリしました。だって同じ安産守りが、6つも入っていたんです」

孝一「僕が……買ったものです」

夏「冬子さんはきっと、そのお守りを……孝一さんの想いを大切にしていたんだと思います」

   ――ハッとする孝一。

夏「ウチはまだ若いから、孝一さんの迷いを吹き飛ばす『気の利いた言葉』なんて掛けられない……」

 「でもきっと大丈夫」

 「だから自分を信じて、孝一さんを信じてくれる冬子さんを信じてください!!」

孝一「(頷いて)……ありがとう立花さん」


○同・個室前の廊下~個室内

   個室内から突然、冬子の苦しむ声が聞こえる。

孝一「冬子!!」

   と、慌てて個室内に入る二人。

   ――痛みで苦しみ、必死に耐える冬子。

夏「ナースコール!!」

   と、ボタンを押して。

孝一「大丈夫か冬子!! 冬子!!」

   何度も呼びかける孝一。

   が、苦しむ冬子には聞こえていない。

看護師「どいてください!!」

   と、二人を押しのけて。

看護師「(触診して)少し破水しています!!」

 「分娩室に移動します!! ご主人も来てください!!」

   と、冬子を車椅子に乗せながら。

   冬子とともに部屋を出ていく看護師。

   ――呆然と立ち尽くす孝一。

   背中をポンと叩く夏。

   不安な顔でゆっくりと振り向く孝一を、真っ直ぐ見つめる夏。

夏「ウチの記憶に、残っていることがあるんです」

 「雲の上でウチの兄貴と二人、赤ちゃんの姿で話している」

 「『あの家に先に行くから待ってるな?』って兄貴が降りて行くんです……そんな夢みたいな記憶」

 「子供は親を選べない。でもきっと、子供は親を選んで生まれてくるのかもしれません」

孝一「(泣きそうな顔で)……うん」

夏「目に見えない、縁のような何かは必ずあります!!」

 「……二人のために、強くなって下さい」


○同・分娩室~分娩室前~分娩室~分娩室前

冬子「もう無理、私には無理です!!」

   と、分娩台で叫ぶ冬子。

   ――励ます医師と看護師。

   必死に踏ん張る冬子。

   ――孝一が看護師に付き添われ、分娩室に入ってくる。

   冬子の手を静かに握る孝一。

冬子「(涙目で)孝ちゃん……」

   ――強くうなずき返す孝一。

   × × ×

   分娩室前のロビーソファー、組んだ手を額に当て、目を閉じて祈る夏。

   × × ×

   分娩室から生まれた赤ちゃんの声。

   ――嬉しそうに顔を上げる夏。

看護師「元気な女の子ですよ」

   と、毛布にくるんだ赤ちゃんを孝一に渡して。

孝一「(泣きながら)うん……このふくよかさ……僕の子だ……」

冬子「孝ちゃん、私にも見せて……」

   ――赤ちゃんを冬子に渡す孝一。

冬子「(微笑んで)……孝ちゃんにそっくり」

孝一「ありがとう冬子……今まで辛い思いをさせてごめんな……」

冬子「ううん。信じてくれてありがとう……」

 「(泣きながら)そばにいてくれて……ありがとう」

   × × ×

   廊下の夏に、ガラス越しに赤ちゃんを見せる孝一。

   ――笑顔の夏。

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