番外編 004
○同・駐車場~個室内
病院玄関前の駐車場で、はしゃぎながら雪だるまを作る子供たち。
――個室内で話す三人。
孝一「ありがとうございました立花さん。後は僕がやりますので――」
冬子「孝ちゃん!! 立花さんは私の為にわざわざ時間を割いて――」
孝一「だから後は僕がやるから、帰ってもらったほうが――」
夏「あ、いえ、気にしなくていいですよ。帰りますから」
と、会釈して出ていこうとする。
冬子「ここに会いに来てくれたってことは、孝ちゃんの子だってやっと信じてくれたの?」
夏「(立ち止まって)え?」
孝一「それは……僕はトロ子が心配で駆けつけたんだ。……だからそれとこれとは」
冬子「(うつむいて)やっぱり……」
孝一「(うつむいて)……」
夏「え……? あの、お二人ご結婚は?」
冬子「まだなんです。でもお付き合いはしています」
夏「なんだ、じゃあお腹の赤ちゃんは――」
孝一「僕の子じゃない」
夏「え?」
冬子「まだそんなこと言って!!」
夏「え? あ……急に昼ドラ展開!?」
「ちょちょ、彼氏さん、一旦外に行きましょう!!」
「もうすぐ赤ちゃんが生まれるんです。今の冬子さんは精神的に凄くナイーブですから、ね?」
孝一「……分かりました」
○同・個室前の廊下
夏「元カレの子!?」
と、個室前の廊下で立って話す夏と孝一。
孝一「はい。たまたま目撃したんです……浮気現場を」
夏「浮気……現場?」
孝一「彼女は元カレと楽しそうに食事をしていたんです」
「元カレは、僕や彼女と同じ大学のサークル出身の先輩で、僕よりもずっとカッコ良くて」
「(うつむいて)ああ、やっぱりなって……」
夏「(怪訝な顔で)……」
孝一「僕は所詮、先輩にフラれた彼女を慰めて、それでたまたま付き合えただけだったんです」
「いや、本当はフラれていなかったのかもしれない……」
× × ×
加奈の父「彼女さんとお付き合いをされて何年になります?」
と、横から声をかける加奈の父(40)。白衣姿。
夏「加奈のおじさん!?」
孝一「(怪訝な顔で)あなたは?」
加奈の父「失礼しました。当病院の外科医をしております。『秋園』です」
「立花さんには娘がお世話になっておりまして、少しやり取りを耳にしたもので……」
孝一「……そうですか」
加奈の父「彼女さんとお付き合いをされて何年になります?」
孝一「二年です」
加奈の父「では浮気の事実を除けば、元カレの子だというあなたの疑いは解けるんですね?」
孝一「……はい」
――夏の背中をポンと叩く加奈の父。
夏「え?」
加奈の父「分かりました。私は仕事中ですので、後は女性の勘に任せます」
「彼女は私が認めた、説得のプロですから」
と、ウインクして立ち去る。
× × ×
夏「あのー……詳しい私情は分かりません」
「でも冬子さんが、あなたの彼女が今、一生懸命頑張っているんです」
孝一「(うつむいて)……」
夏「お腹の子も生まれてこようと、必死に頑張っているんです……」
孝一「(ため息)見たところ君はまだ若い」
「真実が分からないんだから、そんなに簡単には受け入れられないよ」
夏「そんな……」
× × ×
加奈の父「あ、言い忘れたことが……」
と、戻ってきて。
加奈の父「(孝一に)あまり見た目で決めつけない方がいいですよ?」
孝一「(怪訝な顔で)……」
加奈の父「厚かましくてすみません。年寄りからのアドバイスってことで。失礼します」
と、会釈して立ち去る。
× × ×
夏「――とりあえずウチが、冬子さんと話してきます」




