最終話 015
○音葉の回想・通学路の丁字路~横断歩道そば(2月・夕)
降っていた雪は止み、夕焼けが広がる。
ノック前の丁字路の角で傘を持ち、富士山を見つめる夏(高1)と音葉(高1)。
建物の奥、夕焼けに染まる富士山。
音葉「夏、私ね、今は部活で忙しいけど、いつか夏と一緒に富士山に登ってみたいんだ」
夏「何だよいきなり!?」
音葉「あのね、富士山のご来光に向かってお願いごとを叫んだら、そのお願いが叶うんだって」
夏「ホントかよ? そんなの聞いたことないぞ?」
音葉「うふふっ、だってそれ、私が考えたんだもん」
× × ×
夏「(手を振って)じゃあまた明日!! 気をつけて帰れよ」
音葉「(手を振って)うん、バイバイ」
と、丁字路で別れる二人。
× × ×
――横断歩道のそば、血を流し仰向けに倒れている音葉。
周りに立ち、音葉を覗き込む不良B・Cとナンパ男。
奥には車が止まっている。
不良B「われ……何やっちゅうだ!?」
ナンパ男「お、お前らがしつこく遊ぼうって言ったからじゃんよ!?」
「まだ酒が抜けてないのに……」
不良C「こいつ……あたしんちが前に絡んだやつら!?」
不良B「何ぼさっと立っちゅうだ、とっとと逃げんぞ!!」
ナンパ男「お、おう……」
音葉の回想おわり。
○冬月家・外観~音葉の部屋(4月上旬)
冬月家の庭に、咲き終わった3mの河津桜が植えてある。
音葉の机には、H3が開いた交換日記。
約束事の全ての項目にチェックが入っている。
日記の横には地域新聞。
一面に『記憶が戻った被害者の証言で、ひき逃げ犯らを逮捕。犯行を認める』の文字。
その下に『お花見女子高等学校の入学式で桜が満開。卒業式の桜に影響を受けたか?』と書かれた小さな記事。
――額縁に入れて壁に飾られた、完成した富士山パズル。




