最終話 013
○理事長の回想・北川家(9月上旬・夜)
理事長「(優しい顔で)ライブの許可書を書きましょう」
夏「ありがとうございます理事長!!」
「あ……、それともう1つだけお願いがあります」
理事長「もう1つ?」
夏「お願いと言いますか……今回もし万が一、ライブが失敗した場合に備えて、何か別の手を打ちたいと考えています」
「……失敗なんてことは正直考えたくないんですが」
理事長「――何をやるのかが分からない限り、こちらとしても……」
夏「理事長は、どうすれば学校のみんなが笑顔になると思いますか?」
理事長「そうですね……ネクタイ、そして後ろの襟」
と、夏の制服を指差して。
夏「え?」
理事長「我が校の制服のモチーフにもなっている『桜』」
「……理想を言いますと、それを卒業生に見せたいですね」
夏「分かりました、それで行きましょう!!」
理事長「ええっ!? でもどうやって!?」
夏「それはまだ分かりません。(笑顔)でも任せて下さい」
理事長「(ため息)分かりました。ただし学校には傷ひとつ付けないこと、それが条件です」
夏「ありがとうございます!!」
「――それともう1つ……」
理事長「まだ何かあるんですか!?」
夏「あはは……念には念をの思いつきなんですが、許可してもらいたいことが――」
理事長の回想終わり。
○元の体育館内
理事長「創立36年目にして、卒業式でようやく満開の桜が見れましたね?」
校長「はい……理事長」
と、うつむき肩を振るわせて。
理事長「(背中に手を添えて)校長先生……最後くらいは、笑顔で卒業生を送り出しましょう」
校長「はい……」
理事長「(夏を見て)そういえば、まだ一つやり残したことがありました」
× × ×
夏М「(優しい顔で)卒業式と掛けて、校庭に立つ花と解きます。その心は、みんなが笑顔になるでしょう」
と、喜ぶ生徒たちを見つめながら。
――夏に近寄る高丘とマネージャー。
高丘「立花さん、学園祭に僕を呼ぼうとしてくれていたんだね」
マネージャー「立花さんにスケジュールを聞かれて、それっきりでしたから……」
夏「あの時は色々あって呼べなかったんです。すみませんでした」
「(高丘を見て)でもやっぱ、他力本願じゃなくて自分で動かなきゃな!? それが分かって良かった」
高丘「うん」
――入れ代わりで夏に近寄る理事長と校長。
理事長「立花さん、卒業おめでとう」
夏「理事長……」
理事長「よく頑張りました」
と、夏の胸に造花胸章をつけて。
夏「ありがとうございます」
校長「立花さん、卒業おめでとう……」
「(笑顔で)そしてありがとう!!」
と、卒業証書を渡す。
夏「(受け取って)へへっ、ありがとうございます、校長先生!!」
× × ×
ハッと音葉の視線に気付く夏。
体育館に残り、夏を見て微笑む音葉。両脇に春香と加奈。
夏「へへっ」
と、親指を立てる。
親指を立てる音葉・春香・加奈。
理事長「そうそう立花さん!! ライブが終わったら……」
「(ウインク)何だか小腹がへりましたね?」
夏「(ウインク)ですよね!?」




