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ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
最終話 『ウチと彼女の願い事』
184/206

最終話 012

○夏の回想・船津新聞販売店・店内(日曜日・午前)

   座敷に座る夏の父・拓蔵・音葉の父・加奈の父・恵介。

みんな「卒業式に桜を!?」

夏「(うなずいて)理事長には許可を取ってあるし、お金もみんなで貯めている」

 「だから卒業式に桜を咲かせる方法って無いかな?」

拓蔵「そう言われてもここは寒いからなー、満開を迎えるのも四月の中旬だし」

 「万が一気温が上昇して奇跡が起こったとしても、それは国士無双より難しいぞ?」

夏「やっぱり……」

恵介「例えば学校の桜が、寒冷刺激を充分に受けた後に、温室を作って温度管理をすれば、卒業式までには開花するだろうけど……」

夏「本当か兄貴!?」

恵介「でも工事費や設備維持費を考えると、お前らのバイト代だけじゃ厳しいぞ?」

夏「ダメか……」

夏の父「ようは卒業式に桜が咲いてりゃいいんだろ?」

夏「何か策があるのか親父!?」

夏の父「(恵介を見て)2月上旬から3月中旬くらいまで咲いてるじゃねえか、お前の修業先、静岡県河津町の『河津桜』!!」

恵介「河津桜か!! だったら卒業式のシーズンに咲いてるな!?」

夏「おおお!!」

恵介「ただし剪定された河津桜でも3mはあるからなー?」

 「それを運ぶとなると大型トラックが必要だ」

夏の父「さすがにそれを運ぶ大型トラックは無いな……」

夏「無いのか……」

拓蔵「うちの倉庫にありますよ? アコーディオン幌の4tトラック」

夏「本当ですか!? さっすがハルのおじさん!!」

拓蔵「荷台の長さが6mだから、桜を横にしたら余裕で積めるぜ」

 「あ、でも最近使ってないからメンテが必要かも……」

夏「メンテナンスか……」

音葉の父「車のメンテなら任せて下さい!! 本業ですから」

夏「おお、ありがとう音葉のおじさん!!」

拓蔵「じゃあついでに車の揺れも見てもらおうかな?」

夏「是非そうしてもらってください!!」

加奈の父「あのー……私も何か手伝えませんか?」

 「立花さんには加奈がいつもお世話になっていますから」

夏「んー……大型トラックに飾り付ける『大きな紅白幕』を用意できますか?」

加奈の父「分かりました、病院の創立記念式典で使ったものを探してみます!!」

夏「よろしくお願いします!! 先生」

   夏の回想終わり。


○元の体育館内

峰山「立花……お前……」

   と、涙があふれ出る。

   わーっ!! と立ち上がり、峰山の横を上履きのままで駆け出す生徒たち。

校長「戻りなさい君たち!! 何がどうなってるんだ!?」

   ――次々に外に出る生徒たち。

校長「(桜を見て)これ……は……」

理事長「私がすべて許可しました」

校長「理事長!?」

理事長「いいじゃないですか? 楽しい卒業式になって」

 「学校の主役は私達ではなく、彼女たちですから」

校長「ですがこんな無茶苦茶な――」

理事長「やり方はどうであれ、生徒たちの心に響いたようですね?」

 「――娘さんの心にも」

   ハッ!! と羽村を見る校長。

   体育館に残り、桜を見て微笑む羽村。

羽村「(小声で)バカでしょ……」

校長「笑っている……」

 「事件以来、笑わなかった咲良が……」

 「(うつむき声を詰まらせて)笑っている」

理事長М「……ありがとう、立花さん」

   ――桜を見つめる理事長。

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