最終話 006
○船津全景~お花見女子高等学校・校門前(6時過ぎ)
――船津全景。
校門前に並んで座っている羽村と北川。制服姿、脇に鞄。
羽村「もう30分くらいここに座っているんだけど……」
北川「そうだな。早起きもいいものだ」
羽村「バカでしょ? 結局何も――」
北川「来た」
羽村「え?」
――夏がカブで走り過ぎる。
羽村「今のって……」
北川「立花には、達成したい目標があるんだ……睡眠時間を削ってでも」
羽村「(怪訝な顔で)……」
――夏が戻ってきて、二人の前で止まる。
夏「こんな早くから二人で何やってんの?」
北川「仕事で根を上げているあんたの顔を、羽村に見せてやろうと思ってな」
夏「へへっ、それは残念だったな。まぁ仕事が苦にならないと言ったらウソになるけど」
羽村「またライブを提案したって北川さんから聞いたけど」
夏「ああ、校長に反対されたけどな。でも絶対に見せてやるよ、高丘のライブを」
羽村「どうして!!」
夏「え?」
羽村「どうしてそんなに前向きに行動できるの!?」
「苦しいことに、どうして自分から飛び込んで――」
夏「羽村は、自分から変わろうと思わないのか?」
と、エンジンを切って。
羽村「え……」
夏「誰かが変えてくれるのを待っているのか?」
羽村「(うつむいて)……」
夏「なあ羽村……強さって何だろな?」
「人のうわさを面白がっている奴らより、それに耐えてきたウチらの方が、よっぽど強いと思うんだ」
――ハッとする羽村。
夏「(笑顔で)だから羽村も自信を持てよ」
「少しでもウチを信じてくれるなら、卒業式でのライブ、楽しみにしといて」
と、エンジンをかけて。
羽村「(立ち上がって)待って!!」
夏「ん?」
羽村「(うつむいて)校長は私の父なの……」
夏「ああ、何となく気付いてた」
羽村「そう……」
――拳を握り、夏を見る羽村。
羽村「父は学園祭のとき、高丘さんの事務所に連絡をとっていなかった!!」
夏「ウソ!?」
北川「(立ち上がって)なっ!?」
羽村「学園祭が終わってから言われたの」
夏「……でもどうして!?」
羽村「父はおそらく……過去に暴力事件を起こした生徒に対して、絶対に許さないという思いを持っている」
北川「やっぱりか……どうする立花?」
夏「今日の放課後、校長にもう一度ライブを提案する。その気持ちは変わらない」
北川「そっか……」
夏「教えてくれてありがとう羽村、でもどうして?」
羽村「私も、変わりたいと思ったから」
「(ボソッ)それと……カメ好きに悪い奴はいないから」
夏「へへっ、確かにそうだな!?」
と、羽村の鞄についている、小さなカメのぬいぐるみを見て。