最終話 005
○同・武道場裏
鬼島「知ってるぜ」
夏「本当か!?」
鬼島「あの二人だよ」
夏「えっ!?」
鬼島「あたしに手を出して停学になったあいつらは、その間に校長の弱みがないか調べていたらしく、娘の存在を知って手を出した」
夏「何の関係もない羽村に!?」
鬼島「ああ……ホント救えねえバカ共だ」
「退学になった後のことは知らない。もっとも、知ろうとも思わないけどな」
夏「羽村、辛かっただろうな……」
鬼島「所詮人なんてもん、信じてもバカを見るだけだ……どうせ裏切られるんだから」
夏「そうかもしれないな……よし分かった、じゃあウチを信じなよ」
鬼島「は?」
夏「お前が見れなかったものを見せてやるよ」
鬼島「(鼻で笑って)何を根拠にわれを信じろと?」
夏「初めてお前に絡まれた時、そしてさっき胸ぐらを掴まれた時、正直ビックリした」
鬼島「え?」
夏「(見つめて)予備動作がなくて出だしが速い」
――ハッとする鬼島。
× × ×
[フラッシュ]
監督「(キラキラ目)予備動作がなくて動き出しがすばらしい!! 今から始めてもすぐに組手で活躍できるぞ!!」
鬼島「本当ですか!?」
と、喜ぶ白帯姿の鬼島。
× × ×
――フッと笑う鬼島。
夏「少しでもウチを信じてくれるなら、もう一度ここへお祝いに来て欲しい」
鬼島「(背を向けて)あたしも暇じゃないからな、考えとくよ」
と、手をあげて立ち去る。
○同・校門前
北川「事件のことは辛かっただろうけど……あんた、学園祭が終わってから立花と話しているのか?」
羽村「話してないけど、どうして急に立花さんのことに? もう関係ないのに」
北川「関係ないか……」
「そうだな……あんたにとっては終わったことだからな?」
羽村「(怪訝な顔で)……」
北川「今は噂がなくなって、友達と仲良くやっているんだからな?」
羽村「何が言いたいの?」
北川「立花の様子はどうだ?」
羽村「それは……誰ともしゃべらないで、休み時間も一人で寝ているけど」
北川「今のこの状況が、あんたが望んだ結果か?」
羽村「違う!! 私は何も関係ない!! 私は……」
北川「学園祭の後片付けで、あいつの凹んだ姿を見てたら、こうやって体が動いてた」
羽村「え?」
北川「不思議だよな? 確かに、私にもあんたにも立花のことは関係ない」
「ただ一つ、頑張っているやつはその分、どこかで報われて欲しい……」
――うつむく羽村。
北川「でも今の立花にとって、教室でのボッチは何ともないのかもしれない」
羽村「(顔を上げて)え?」
北川「寝ているのも多分、本当に眠いからだろう」
羽村「(怪訝な顔で)……」
北川「明日の朝6時、校門前に付き合ってくれないか?」
「もう立花と関係がないと思うなら、来なくてもいい」
と、背を向けて歩き出す。
――北川の背中を見つめる羽村。
羽村「(ボソッ)……バカでしょ」




