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ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
第一話 『ウチと彼女の約束事』
17/206

第一話 017

○お月見総合病院・全景~療養型病棟の玄関脇~病院の廊下~音葉の病室の扉の前(夜)

   ――スギやマツに囲まれた病院。

   一般病棟と、療養型病棟が並ぶ。

夏「通り雨で助かったよ」

   と、療養型病棟の玄関脇にバイクを止めて。

   × × ×

   廊下を歩く夏。

音葉の母「あ、夏ちゃん」

   と、奥から歩いてくる、音葉の父(42)と母(44)。

夏「おじさんおばさん、こんばんは!!」

音葉の母「毎日ありがとね。音葉も凄く喜んでいるわ」

夏「(笑顔で)いやー、ウチが会いたくて来てるだけですから」

音葉の母「(会釈して)じゃ、私たちは先に」

   夏、会釈し、歩いていく。

   ――見送る音葉の父と母。

音葉の父「あれから一年が過ぎて、お見舞いに来る友達もあの子だけになったな……」

音葉の母「そんなものよ、あなたにも親友と呼べる人は少ないでしょ?」

音葉の父「……まあな」

音葉の母「ほんと、夏ちゃんの笑顔は私たちに希望を与えてくれるよね……」

 「辛いのは私たちだけじゃないんだって」

   × × ×

   個室病室のプレートに、『冬月 音葉』の文字。

   ――神妙な面持ちで、扉の前に立つ夏。


○夏の回想・通学路の下り坂~丁字路(二月・夕)

   降っていた雪は止み、夕焼けが広がる。

   傘を持ち、並んで歩く夏と音葉。

音葉「まずは一年に一人、自分で友達を作ってみて? 同じ学年で作り辛かったら、新入生でもいいんじゃない?」

 「(笑顔で)だって、夏の変な噂を知らない子たちなんだから」

夏「ええっ!?」

音葉「それと約束事なんだけど、全部で九つあるからまとめてみたの」

   と、紙を渡して。

夏「うわ!? マジかよ!?」

音葉「夏が卒業するまでゆっくりでいいよ?」

 「約束事は『ステップ1から3』の中に、三つずつ分けてあるから。もちろん同じことを何回達成してもいいけどね?」

夏「無理無理!! こんなにいっぱい――」

音葉「だよねー? だから別に無理にやれとは言わない。それは夏に任せる」

夏「何だよそれ……」

   ――丁字路の角で立ち止まり、後ろを向く音葉。

   建物の奥、夕焼けに染まる富士山。

音葉「私……ここから見える富士山が一番好きかなー?」

 「(振り向いて)なぜだか分かる?」

夏「……え?」

音葉「(微笑んで)それはね、夏と毎日いっしょに見ている景色だから」

夏「……音葉」

音葉「夏、私ね、今は部活で忙しいけど、いつか夏と一緒に富士山に登ってみたいんだ」

夏「何だよいきなり!?」

音葉「あのね、富士山のご来光に向かってお願いごとを叫んだら、そのお願いが叶うんだって」

夏「ホントかよ? そんなの聞いたことないぞ?」

音葉「うふふ、だってそれ、私が考えたんだもん」

[ホワイトアウト]

[以下フラッシュ]

   × × ×

○立花家・夏の部屋(夜)

   スマホを耳にあて、驚いた顔の夏。制服姿。

   × × ×

○通学路

   横断歩道に落ちている、音葉の壊れた傘。

   雪が積もった路面を照らす、パトカーの赤い光。

   × × ×

○お月見総合病院・廊下

   急ぎ足の夏。

   酸素マスクをつけ、ICUで治療を受ける音葉。

   ――廊下で話す夏と音葉の母。

音葉の母「(涙をこらえて)夏ちゃん……音葉ね、意識が戻るか分からないの……」

   夏の回想終わり。


○元の音葉の病室の扉の前

   ――ポンポンと、太ももの横を叩く夏。

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