第十話 011
○駅への道(連休最終日・午後)
日記を探す音葉・稲穂・春香・加奈。私服姿。
春香「稲穂ちゃん時間大丈夫ー?」
稲穂「夜まで大丈夫だよー」
加奈「朝から探してるのに見つからない……」
「(音葉を見て)夏先輩……大丈夫ですかね……?」
音葉М「私のせい……。稲穂ちゃんと久々に会えて嬉しくって、夏のことをおざなりにしていた。だから……」
――曇り空を写す。
○富士山ランド・敷地内
夏М「(息を切らして)どこだよ!? どこに落としたんだよ……」
と、探しながら。ジャージ姿に手提げ鞄。
――前から楽しそうに歩いてくるカップルと肩がぶつかる。
カップルの女性「キャッ!?」
夏「あ、すみません……」
カップルの男性「危ねえだろ!? ちゃんと前見て歩けよ!!」
夏「すみません、すみません……」
と、お辞儀。
カップルの女性「もういいから行こうよー? 次のやつに並ばないと時間が無くなっちゃうー」
カップルの男性「そうだな」
と、歩き出すカップル。
その後ろでうつむいたままの夏。
カップルの女性「あの子あれじゃん? 男に振られたとかー」
カップルの男性「あー、可愛そうな子かー」
カップルの女性「人に迷惑かけるなって感じだよねー?」
カップルの男性「ホントだよなー?」
夏М「ウチだけがお前との思い出を覚えてるなんて……そんなの寂しすぎるじゃねえか」
[フラッシュ]
× × ×
立花家の庭、餅つきをする高1の夏と音葉。
× × ×
スキーを楽しむ高1の夏と音葉。
雪の上で大の字になる笑顔の2人。
× × ×
夏М「(泣きそうな顔で)分かってたよ……あのとき音葉が、ウチに気を遣って言ってくれたってことぐらい」
М「……でも大切な日記を無くした自分が許せなくって、必死に探したのに見つからなくって、つい音葉に当たってしまった」
М「……最低だなウチ」
と、下を向いて歩きだす。
――はしゃぐ客たちとすれ違う。
夏М「(泣きながら)出てきてくれよ……もういいだろ? 頼むよ……お願いだから」
と、立ち止まって。
女の子「ママー!! 係のおじちゃんに機関車トマスのメダル貰ったよー!!」
と、幼稚園児の女の子がメダルをかかげて走って来る。
母親「あらー、良かったわねー」
女の子「あっ!!」
と、夏の手前で転ぶ。
夏「あ……」
――物置の下に転がるメダル。
母親「大丈夫!? 危ないから走らないの!!」
と、駆け寄って。
女の子「(物置を指差して)トマスのメダルがー……」
夏「(涙を腕で拭って)ウチが取りますよ」
母親「えっ、すみません、ありがとうございます」
――物置の下を覗き込む夏。
夏「あーっ!!」
と、メダルの下に交換日記を見つける。
母親「どうしました!? ありました!?」
夏「(泣きながら)……あじまじだ」
× × ×
夏「はい」
と、しゃがんで女の子にメダルを渡す。
女の子「ありがとうお姉ちゃん!!」
母親「ありがとうございます」
女の子「お姉ちゃんも探し物が見つかって良かったね!?」
夏「(優しい顔で)うん。大切なものは、絶対に無くすんじゃないぞ!!」
と、女の子の頭に手を置いて。
女の子「(笑顔)うん!!」




