表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
第十話 『トラウマさんさようなら』
166/206

第十話 010

○駅までの道~駅前のコンビニ~駅までの道(20時過ぎ)

稲穂「おーさむっ、結構冷えるなー」

   と、駅までの道を歩きながら。

   ――道の反対側に懐中電灯の明かりを見つけて立ち止まる。

稲穂「(ニヤリ)ふーん……」

   と、歩き出す。

   × × ×

店員の声「ありがとうございましたー」

   稲穂、レジ袋を片手にコンビニから出てくる。

   × × ×

   懐中電灯で道を照らし、日記を探している夏。ジャージ姿。

稲穂「はい、プレゼント」

   と、後ろから顔の横にコーヒーを差し出して。

夏「(振り向いて)え!?」

稲穂「あったまるよ?」

夏「(受け取って)あ、ありがとう……」

稲穂「がんばるね? ……ちょっと休もっか?」

   と、縁石に座って。

夏「……ああ」

   ――並んで座る2人。

   星空を写す。

稲穂「(コーヒーを飲んで)綺麗だね? 東京じゃここまで綺麗に見えないよ」

   と、星空を見上げて。

夏「(コーヒーを飲んで)そうなのか?」

稲穂「うん」

夏「明日……何時に帰るんだ?」

稲穂「朝10時」

夏「何かごめんな?」

稲穂「何が?」

夏「今日は折角ウチを元気づけようと誘ってくれたのに……その、音葉との喧嘩に巻き込んじゃって……」

   ――周りの景色を写す。

稲穂「慣れてるから」

夏「え……?」

稲穂「家の両親さ、私がいないといっつも喧嘩ばかりしてるんだ」

夏「(稲穂を見て)……」

稲穂「ほら、お笑いに例えると両親がボケ役で私がツッコミ役って感じ?」

 「だから私がいない休みの日なんて、朝からずーっと言い合いの平行線」

夏「ボケ役を支配するツッコミ役が必要なのか?」

稲穂「んー、ツッコミって相手を支配するんじゃなくて、愛情だと思うんだ」

夏「愛情……」

稲穂「うん。相手を理解しようと思っているからこそ、相手のボケに気付ける」

夏「……ツッコミも大変なんだな?」

稲穂「面白いよ? 相手を理解する事って――友達を理解する事と同じ」

夏「友達か……」

稲穂「でもさ、相手に100%依存しちゃってもダメなんだよねー。きっと分かってくれるだろうって」

夏「……難しいよな? 人付き合いって……」

稲穂「だって生まれも育ちも考え方も違うんだよ? (笑顔で)当たり前じゃん」

夏「へへっ、そう言われればそうだよな」

稲穂「喧嘩ってさ、勝ち負けじゃないんだよね……どっちも傷つくし」

 「世間ではさ、喧嘩するほど仲がいいって言うけど、本人達はきっと辛いんだよね……」

   ――うつむく夏。

稲穂「私もね、むかし音葉ちゃんと喧嘩したことがあったんだ」

夏「ほんと?」

稲穂「確か些細なことだったと思う」

夏「些細なことって?」

稲穂「何だったっけー……忘れちゃった!!」

夏「へへっ」

稲穂「でも次の日に私が謝った!!」

夏「え?」

稲穂「ほら、音葉ちゃんああ見えてけっこう頑固で溜め込んじゃうからさ……」

 「こっちも意地を張ってるとどんどん謝り辛くなるし……だから私が割り切った」

夏「(神妙な面持ちで)……」

稲穂「……自分にとって何が一番大切かって考えたら、意地を張るのもバカバカしく思えて」

 「でもね、本当に大切な事を簡単に割り切れる人なんていないと思うんだ……そこは信じてあげて」

夏「……そうだよな。いや……分かってた」

   ――微笑む稲穂。

夏「あのさ、良かったら音葉の……中学のころの話を聞かせてくれないか?」

稲穂「いいよ」

 「音葉ちゃんとは中学3年生の時に、同じクラスになって初めて知り合ったんだ」

夏「え? じゃあ音葉が変わるきっかけを作ったのって……?」

稲穂「あー、その話は確か……ナンパがどうとかって言ってたかなー?」

夏「(怪訝な顔で)……」

稲穂「で、剣道も昔やっていたって聞いたから、後少しだけどやってみなよ? って剣道部に誘ったんだ」

 「そしたらさ、三年最後の大会でどんどん勝ち上がっちゃって!!」

夏「はは……」

稲穂「きっと部活が終わって家に帰っても、必死に練習してたんだと思う」

夏「口には出さないけど、人一倍努力する……音葉らしいや」

稲穂「そうだね……」

 「あ!! 話が長引いてごめんね!? アイスコーヒーになっちゃったね!?」

夏「(笑って)ホットもアイスも両方好きだから」

   × × ×

稲穂「――交換日記……大切なものだよね?」

夏「ああ」

稲穂「(小声で)分かるな、その気持ち……」

夏「え?」

稲穂「よし決めた!! 明日私も探すよ!! 帰る時間を遅らせて」

夏「そんな!? これ以上迷惑をかけられないし――」

稲穂「気にしない気にしない!! (ニコッ)大切な友達の為だから」

夏「……四季さん」

稲穂「かったいなー、呼び捨てで良いよ、タメなんだから」

夏「へへっ、よろよろしく!! 稲穂」

稲穂「よろよろしく!! 夏」

   と、アイスコーヒーで乾杯。

稲穂「(立ち上がって)よーし今日はもう帰ろう? 続きはまた明日!!」

夏「(立ち上がって)おう、ありがとな?」

稲穂「こちらこそ、今日は凄く楽しかったから」

   と、歩き出して。

稲穂「(振り向いて)あ、そうそう。私が音葉ちゃんと喧嘩した理由……」

夏「思い出したのか?」

稲穂「うん。目玉焼きに何をかけるかって話で喧嘩した!! おっやすみー!!」

   と、大きく手を振って。

夏「(呆れ顔)ははっ……おやすみー」

   と、小さく手を振って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ