第十話 002
○立花家外観~リビング(9月・連休3日目・7時前)
――立花家外観。
リビングの食卓で朝ごはんを食べている夏の父と母。
ソファに横になり、カメのクッションを抱えてテレビを見つめる夏。ジャージ姿。
天気予報士「今日の天気は晴れ、明日は夕方に通り雨がありそうです」
夏の父「(わざとらしく大声で)か、母さんの作る朝ご飯はおいしいなー!!」
と、夏をチラ見。
夏「(テレビを見つめて)……」
夏の母「ほら夏!! さっさと食べちゃいなさい。遅れるわよ?」
夏「……いらない」
夏の父「(夏のハムエッグに手を伸ばして)なんだ珍しい」
夏の母「お父さん!!」
夏の父「ごめんなさい……」
夏の母「昨日の学園祭のことをいつまでも引きずってないの!!」
夏の父「そうだぞ。母さんと一緒に見ていたけど、夏と同じぐらい父さんも悔しかった!!」
「でもな、諦めることと割り切ることは別だ」
と、夏のみそ汁にそっと手を伸ばして。
夏「(テレビを見つめて)……」
夏の父「お前は行動することを諦めた訳じゃねえんだろ?」
夏「(神妙な面持ちで)……ああ」
夏の父「だったらもういいじゃねぇか、昨日のことはよ?」
夏の母「(みそ汁を取り上げて)お父さんは諦めてください」
夏の父「おおぅ……」
夏の母「みんなが気を使って遊園地に誘ってくれたんでしょ?」
夏「『ああ』って言ったけど『行く』とは言ってない……」
夏の母「じゃあ何で昨日遊びに行くって言ってたの!?」
夏「どうせ音葉が中学のダチと遊ぶついでなんだから、どう――」
夏の母「(みそ汁を強く置いて)どうでもよければ誘われません!!」
「ゴチャゴチャ言ってないで早く食べなさい!!」
夏「(食卓について)ったく、分かったよ!!」
夏の父「あっ、そうだ、ほら、いつものチェックしないとな!?」
と、チャンネルを変えて。
夏「うぉい!! なに勝手に変えてんだよ!?」
アナウンサー「ごめんなさい……今日の最下位は獅子座の人!!」
夏の母「あらー……夏は今日最下位ね?」
夏「しかもタイミング悪すぎだろ!!」
アナウンサー「獅子座の人はよくコケる1日になるでしょう。足元に気をつけてお過ごし下さい」
夏の父「(わざとらしく大声で)そうなんだー」
「(夏を見て)足元には気をつけるんだぞ?」
夏「ったく、他人事だと思って……」
と、ご飯を掻き込みながら。
夏の母「ふふっ、占いなんて気の持ちようなんだから」
夏の父「そうだぞ夏、気にするな!!」
夏「(呆れ顔)毎日楽しみにしている親父に言われたかねえよ……」
「ごちそうさま!!」
と、みそ汁のお椀を強く置いて。
――完食されたお皿を見て、優しく微笑む夏の母。




