第九話 015
○同・体育館(14時)
ザワザワと体育館に集まった生徒や一般客たち。
観客スペースの最前列に立つ音葉・稲穂・春香・加奈・望美・知恵・湖太郎。
ステージ下の脇に立つ夏。
――校長がマイクを持ってステージに上がる。
校長「えーみなさん、高丘 景さんといえば、今売れに売れている歌手です」
一部の生徒たち「景!! 景!!……」
と、手拍子であおる。
校長「(手で静めて)そのため、高丘さんはスケジュールの関係により、今日のライブに来れなくなりました」
夏「!?」
驚く実行委員たち。
眉をひそめる峰山先生と理事長。
みんな「えー!! ふざけんなよー!! 学園祭のメインだろー!!」
と、大ブーイング。
校長「大変残念な結果になりましたが、ライブが無くても皆さんは、とても良い学園祭を作り上げたと思っています」
みんな「ふざけんな!! 実行委員長は何やってたんだよ!?」
校長「実行委員長ですか……(夏を見て)立花さん、ステージに」
夏「(唖然として)……」
――ステージに上がる夏。
校長「今回、高丘 景さんのライブを提案してくれたのは彼女でした。ですから!!」
「……ですからみなさん!! 一番辛いのは彼女です!! どうか、彼女を責めないで下さい……」
みんな「ライブを提案したならちゃんとスケジュールくらい確認しろよ!! そうだそうだー!!」
夏「(唖然として)……」
音葉「……夏」
春香「……なっちゃん」
加奈「夏先輩……」
心配そうに夏を見る知人や実行委員たち。
――怪訝な顔の羽村。
校長「(小声で)残念です……後のシメは任せますね? 実行委員長」
と、夏にマイクを渡してステージを降りる。
――マイクを持ったまま立ち尽くす夏。
みんな「何とか言えよー!! 嘘つき―!!」
峰山「お前ら黙らんかあああ!!」
夏「あ……あの……」
みんな「もういいよ!! 代わりに一発芸でもいいから何かやれよー!! あはははは!!」
峰山「黙れお前らあああ!!」
――マイクを持ったまま立ち尽くす夏。
稲穂「友達がピンチだ!! 行くよ音葉ちゃん!!」
と、音葉の腕を引っ張って。
音葉「えっ!?」
稲穂「(ステージに上がりながら)中学の時のネタ、覚えてるよね!?」
音葉「うん!! ハッキリと」
校長「何だね君たちは!? 勝手にステージに上がるんじゃない!!」
稲穂「立花さん、ここは私たちに任せて」
と、夏からマイクを取って。
夏「え……?」
――ステージ横のマイクスタンドを持ってくる音葉。
音葉「夏はステージ脇で見ていて」
夏「あ……」
と、後ずさりしてステージ脇へ。
稲穂「はいどうもー!! ここからはプログラムを変更いたしまして、川柳漫才をお送りしまーす!!」
音葉「よろしくお願いしまーす!!」
と、マイクを挟んで。
校長「どういうことだ!? 1人は一般客じゃないか!? 今すぐ――」
理事長「いいじゃないですか校長先生。時間はたっぷりとあるんですから」
校長「(下がって)あ、はい……理事長」
――ざわつくみんな。
まばらな拍手の中、川柳漫才を始める音葉と稲穂。
その姿を唖然と見つめる夏。
――外の風景を写す。




