第九話 007
○河口湖駅への道路~河口湖駅駐車場
夏「何かこう、お菓子とか包んだ方が良いんじゃないか?」
と、道路を並んで歩きながら。
――ぷっと吹き出す北川。
夏「何だよ? 何か変なこと言ったか?」
北川「あんたにもそんな気遣いが出来たんだな?」
夏「なんだとっ、バカにするなよ?」
音葉「うふふ」
北川「そろそろいいか……」
と、スマホを操作して。
北川「飛鳥井、車をよこしてくれ。客人が二人」
[以下カットバック]
飛鳥井「かしこまりましたお嬢様」
と、スマホで話す飛鳥井 忠【あすかい ただし】(男68)。
北川「場所は河口湖駅駐車場」
飛鳥井「かしこまりましたお嬢様。すぐに向かいます」
× × ×
夏「もしかしてお迎えを頼んだのか!? そんな大げさな」
と、河口湖駅駐車場で待ちながら。
北川「私は電車通学だ。車を頼んだ方が早い」
夏「でも早いったってそんな直ぐに――」
ロールスロイス ファントムクーぺが到着する。
飛鳥井「お待たせいたしましたお嬢様」
と、運転席から降りて助手席のドアを開ける。
夏「早っ!?」
北川「(乗り込んで)ありがとう飛鳥井」
飛鳥井「立花様とお綺麗なお友達もどうぞ」
と、後部座席のドアを開けて。
夏「何でウチの名前を?」
飛鳥井「(微笑んで)よーく存じ上げております」
○走行中の車内
音葉「うふふ、高級車に初めて乗っちゃった」
夏「ウチもだよ。ハルのおじさんが乗ったら、この静かさにビックリすんじゃね?」
音葉「うふふ」
夏「(北川を見て)でもよ、前にケガをしていた時は普通の車で学校に来ていたよな?」
北川「カモフラージュだ。何かと注目されるのも嫌だしな」
夏「まあ確かにこの車じゃ目立つわな」
――走り去るロールスロイス ファントムクーぺ。




