第九話 002
○同・夏の教室(昼休み)
席に座る羽村の横に立つ夏。
夏「羽村さんだっけ? 一緒に実行委員がんばろうな!?」
羽村「……私はあまり乗り気じゃないけど」
と、机に置いた鞄から財布を取り出して。
夏「ははは……。おっ?」
――羽村の鞄についている小さなカメのぬいぐるみを見て。
夏「羽村さんカメ好きなんだ!?」
羽村「……別に」
夏「羽村さんって物静かだけどきっといい人だよ!?」
「(笑顔で)カメ好きに悪い奴はいないから」
羽村「さっきから勝手に決めつけてバカでしょ」
夏「なっ!?」
羽村「随分と楽しそうね? 立花さん。あなたへの噂が無くなったから当然よね?」
夏「はー!? 何だよそれ?」
羽村「おかげで私は、昔の噂を蒸し返されていい迷惑」
夏「それはウチのせいじゃないだろ?」
「第一調子のいい奴らなんて放っておけばいいんだよ、ウチはそうしてきた」
「大切なことは周りから何を言われても自分を見失わないこと――」
羽村「火の無い所に煙は立たない」
夏「え……?」
羽村「私に関わった子が退学になったのは事実よ」
と、席を外す。
○同・中庭(昼休み)
噴水に腰掛けて弁当を食べる5人。
上手から望美・加奈・春香・夏・音葉。
音葉「羽村さん?」
夏「おう」
音葉「んー、分かんない……高1の時は違うクラスだったんじゃない?」
夏「そっか……いや、いいんだ」
音葉「でも羽村って名前、どこかで……」
× × ×
夏「そういえばこの前、学園祭に中学の友達が来るとか言ってなかった……?」
音葉「うん。四季 稲穂ちゃんっていう子で、中学卒業まで交換日記をしていたんだ」
夏「ふーん……」
音葉「部活も同じ剣道部でー」
「ほら、前に言った最後の約束事、『学校のみんなを笑顔にする』って目標」
「私の時は学園祭で稲穂ちゃんと一緒に川柳漫才をやったんだ」
夏「川柳漫才!?」
音葉「うん、私が川柳でボケて稲穂ちゃんがツッコミ」
夏「へー、随分活発な友達なんだな?」
音葉「うん!! すっごくパワーを貰えるよ?」
夏「(小声で)そっか、音葉が中2の時に変わるきっかけを作った友達か……」
音葉「え、何?」
夏「いや、何でもない」
音葉「でもその漫才で『学校のみんなが笑顔になった』かどうかは分からないんだ……」
夏「笑顔か……」
× × ×
夏「まてよ。学園祭の実行委員ってさ、お前がやった漫才のようにイベントを提案できる権限もあるんだよな?」
音葉「そうだね、実行委員長になれば案も通りやすいかも」
夏「ライブ」
音葉「え?」
夏「ライブだよ!! 高丘 景の!!」
音葉「それいいね!?」
夏「高丘っちなら人気があるからさ、絶対みんなが笑顔になるよ!!」
音葉「でも今は学園祭のシーズンだから、スケジュールがいっぱいかも。マネージャーさんに確認してみたら?」
夏「今メールで確認したら、学園祭当日の予定はまだ入ってないって」
と、スマホを見せて。
音葉「確認早すぎー」
夏「よっしゃ決まりだな!? 後は実行委員長になって校長の許可を貰うだけだ!!」




