第一話 014
○同・展望台(夕)
富士山と富士河口湖町が、一望できる展望台。
展望台の奥には、休憩所『たぬきち茶屋』。
その隣に、ウサギの御神体を祀った『うさきち神社』。
加奈「わー!! 本当に町が一望できるなんて!!」
と、手すりから身を乗り出して。
加奈「富士山もすごく綺麗ですね!?」
夏「喜んでくれて良かった。がんばった甲斐があった……」
と、富士山に背を向け、観光望遠鏡の踏み台に座りながら。
春香「あっ!! なっちゃん流れ星!!」
夏「(振り向いて)! どこだどこだ!?」
と、思わず手すりから身を乗り出して。
春香「あー……消えちゃった」
夏「何だよまったく……お前ら何かお願いしたか?」
加奈「あ、忘れてました……」
春香「ハルも住所までしか言えなかったよー」
夏「何だよお前ら……勿体ないなー」
加奈「あれ!? 夏先輩、高いところ克服できたんじゃないですか!?」
夏「あ……ほんとだ」
春香「(笑顔で)おめでとうなっちゃん」
夏「ありがとう!! 勢いに任せれば意外と簡単だったな!?」
三人「あはははは!!」
――たぬきち茶屋のベンチに座る、白い夏。
春香「あ……。やっぱダメだったみたい……」
× × ×
夏「そこの君たち!! これが目に入らぬか!!」
と、ラップの上に乗せた、桜餅を見せて。
春香「(駆け寄って)おおー!! さすがなっちゃん!!」
「春といえばこれだよねー」
× × ×
ベンチに座っている三人。
夏、短い鉄砲串で、桜餅を三等分。
夏「一番大きいのがウチのやつなー?」
春香「えー、なっちゃんずるーい!!」
夏「ずるくねーよ!! ウチが新入生に変装して、やっとの思いで貰ってきたんだから」
[セーラーブラウスの首元を、頭にスッポリ被せ、桜餅を貰う夏のイメージ]
春香「ブー、ブー」
夏「よーしお前ら!! これでウチらは同じ釜の飯を食った仲間だ!!」
加奈「ちょっと意味が違いますけど……」
と、桜餅を食べながら。
夏「あ、ちなみにそれ、さっきラップ剥がすときに落としちゃって」
春香・加奈「ブーッ!!」
夏「きったねーな!? すぐに拾ったから大丈夫だって?」
春香「もー、なっちゃん……気が利くんだか利かないんだかー」
夏「うっせぇ」
春香・加奈「あはははは」
[うさきち神社で、狛兎の頭や脚を撫でる三人]
[ハートの形をした、『最天上の鐘』を鳴らす三人]
[素焼きの器を的に投げる、『かわらけ輪投げ』をする三人]
――夕焼けに染まる富士山。
夏「あーっ!! ちょっとウチ、寄るとこあるから先に帰るわ!!」
「お前らはもう少しゆっくりしていけよ?」
春香「ラジャー!!」
加奈「あのっ、ありがとうございました!! 夏先輩!!」
夏「いいっていいって!!」
「(笑顔で)ウチらもう友達だろ?」
加奈「(笑顔で)はい!!」
× × ×
加奈「あんなに急いでどこに寄るんでしょうね?」
と、マッチョポーズをしている春香を見て。
春香「んー……恋人のところかなー?」
加奈「ふええええー!?」