第八話 016
アシスタント「中継行きます!! 3・2……」
司会「続きまして、高丘 景さんのライブです!!」
――黄色い声援と拍手。
ステージ衣装で登場の高丘、髪は一つ結び。
夏「……ダメだったか」
高丘「えー、今日はイベントに呼んでいただき、とても感謝しています」
「ライブの前に一つだけ、みなさんに報告があります」
――ざわつく会場。
髪をほどいて衣装を脱ぎ捨てる高丘。
女性の水着姿、腰にはパレオ。
会場「!」
夏「うおおお!! 心を決めたか高丘っち!!」
――ざわつく会場。
高丘「色々悩みましたが、これからは本当の自分を、みなさんに見てもらいたいと思います!!」
――歌の伴奏が流れる。
高丘「――傷つき 折れた翼ひろげ 空をめーざす 僕はもう迷わーなーいかーら このまーまーでーもー」
と、歌い出す。
現場監督「うおおお!! 生中継でこの展開!! 凄いぞ高丘あああ!!」
悪徳編集長「きーっ!! 何よあの格好!? 自分からカミングアウトしやがった!!」
「全国ネットで先を越されたら、うちのスクープ記事がオジャンじゃないの!!」
と、ユニットハウスへ早歩き。
悪徳編集長「(電話して)中止よ中止!! 印刷中止!! 今すぐ記事を差し替えなさい!!」
相手の声「無理ですよ!! こちらはギリギリまで現場を待たせてたんですから!!」
「今から刷り直しをしている余裕なんてありません!!」
悪徳編集長「くそおおおお!!」
と、ユニットハウス前でスマホを砂浜に投つけ、へたり込む。
マネージャー「(笑顔で)早速の宣伝をありがとうございます」
と、拾ったスマホを差し出して。
マネージャー「普通ならスクープとして、うちに黙って雑誌を発売するはず。なのにあなたはそれをしなかった」
「高丘の女装姿が、あなたの女装姿より可愛かった。それを認めたくなくて、今回わざわざうちに手を差し伸べられたんですよね?」
「――恐喝という形で」
悪徳編集長「(うつむいて)くっ……なぜ分かったの?」
マネージャー「(照れて)ははっ。高丘とずっと一緒にいる私の目はごまかせませんよ」
悪徳編集長「(スマホを受け取って)……」
マネージャー「大人に……なりましょうよ」
と、ステージ上の高丘を見つめる。




