第八話 014
○同・イベント会場~ユニットハウス前(17時45分頃)
ステージには『白浜大海原の祭典』と書かれた垂れ幕。
ステージ上では和太鼓の演奏。
ステージ下、観客スペースの最前列で立って見ている夏たち。拓蔵もいる。
――ステージ横にはユニットハウス。
ユニットハウス前に待機するマネージャーに、声をかける悪徳編集長。
悪徳編集長「マネージャーさん、もう時間ですよ? これ以上は待てません」
「1000万円で買い取ってもらえますか?」
マネージャー「一千って!? 話が違うじゃないですか!! 買い取り金額は100万だったはず……」
悪徳編集長「あら、何を言ってるの? うちは印刷ギリッギリまで待ってあげたのよ?」
「(笑いながら顔を近づけて)対価がつくくらい当然でしょう?」
マネージャー「くっ、……うちは……払いません」
悪徳編集長「はい? 太鼓の音でよく聞き取れなかったわ? もう一度言ってちょうだい?」
マネージャー「うちはあなたに、お金を払う気など全くありません!!」
「――お引き取り願います」
悪徳編集長「あらそう? バカバカしい」
「折角こっちから手を差し伸べてあげたのに……これで高丘のイメージダウンは必須よ!?」
――爪先立ちでマネージャーを見上げる編集長。
悪徳編集長「子どもじゃあるまいし……強がりもほどほどにしなさい!! いまさらアンタたちに何ができるっていうの!?」
マネージャー「私は景を信じています」
悪徳編集長「はい?」
マネージャー「たとえ雑誌が発売されて、女装趣味が明るみに出たとしても……彼ならきっと乗り切ってくれます!!」
「どうぞお引き取り下さい!!」
悪徳編集長「あーあ、もう知らない知らない!!」
と、振り返って。
悪徳編集長「(電話して)もしもーし、あたし。校了よ!! そんな胸くそ悪いもの、さっさと印刷しちゃって!!」
「そうよ!! フル回転よ、フル回転!!」
――うつむくマネージャー。
悪徳編集長「……さてと、あたしは隅っこで静かに見学させてもらいますね? 高丘君の最後のライブを」
と、観客スペースの端へ向かう。




