第一話 013
○河口湖天上山公園ガチガチ山ロープウェイ・全景~建物内~チケット売り場
下手に河口湖、上手に天上山へ登れるロープウェイがある。
夏「よーし着いたぞー」
加奈「(ゴンドラを見上げて)わー!! あれで展望台まで!?」
春香「何度きてもワクワクしちゃうなー」
ウサギとタヌキのキャラクターを、大きくあしらった建物。
――階段を上がる三人。
夏の母「あら、夏がここに来るなんて珍しい」
と、チケット売り場から。夏の母(43)。
春香「おばちゃんこんにちはー」
夏の母「ハルちゃんこんにちは」
春香「(加奈を見て)なっちゃんのお母さんだよ」
加奈「秋園 加奈です!! こんにちは!!」
夏の母「あらー、新しいお友達ー? こんにちは」
「はい夏、もう克服したの?」
と、往復チケットを三枚渡して。
夏「んなわけないだろ……」
○同・稼働中のゴンドラ内
大人が15名ほど乗れるゴンドラ。
春香「あれが河口湖大橋で奥に見えるのが破風山」
と、加奈に案内している。他の乗客はいない。
加奈「わー、綺麗なコントラストですねー!!」
「それにしても夏先輩、どうしたんだろう? 急に黙り込んじゃって……」
――二人と反対側の席、うつむいて座る夏。
魂が抜け、白くなっている。
春香「なっちゃんは高いとこ苦手だからねー」
加奈「ええっ!?」
春香「だからこの場所くるのに渋ってたみたい」
加奈「……そうだったんですか」
春香「よーし!! ここは一つ、なっちゃんの元気を取り戻すかー!!」
「なっちゃーん、こうやると楽しいよ!? ロープウェイが揺れて」
と、ピョンピョン跳ねる。
――ドーン!! と音がする。
白い夏と向かい合い、背筋を伸ばして座る、冷や汗の二人。
夏のすぐ横の壁が少し凹み、煙が出ている。