第八話 006
○同・海中~水面~岩場下の砂浜
高丘М「ここで……死ぬのか……この格好で」
沈んでいく高丘。女性のビキニ姿、腰にはパレオを巻いている。
――うっすらと夏の姿が写る。
高丘М「人魚……さん?」
× × ×
高丘の腕を肩に回し、水面から顔を出す夏。
夏「ハァハァ!! 浅瀬まで……行けるか……」
と、泳ぎ出す。
× × ×
――岩場下の砂浜、ヤドカリを写す。
夏「しっかりしろ!! 大丈夫か!?」
と、高丘の口元に耳を近づけるが、反応がない。
夏「呼吸をしていない、心肺停止状態か!?」
「こういう時はえーっと、心臓マッサージと人工呼吸!!」
「むかし空手で心肺蘇生を習っていて良かった!!」
と、高丘の胸に両手を重ねて置く。
夏「え? この胸……。いや、今はどうでもいい」
と、心臓マッサージ。
夏「次は軌道を確保して人工呼吸!!」
――口を近づけて、ハッ!!
夏「人工呼吸……」
М「うお!! ウチのファーストキスじゃねーかこれ!!」
と、頭を抱えて。
夏「いやいや、今はそんなことを言ってる場合じゃない!!」
片手で高丘の鼻をつまみ、顔を近づける夏。
× × ×
――黒い画面。
高丘М「柔らかい唇の感触……。あぁ、さっきの人魚さん……」
夏の声「よし、心臓は蘇生した、あとは呼吸だけ!! もう一度!!」
高丘М「また柔らかい感触……。人魚さんの温もりが僕に伝わってくる」
М「出来ることならこのままずっと――」
М「え!? し、舌を絡めてきた!?」
М「ちょっと流石にそれは激しすぎだよ人魚さ――」
――目を開ける高丘。
高丘「!」
――目の前に拓蔵の顔。
拓蔵「やったぞ夏ちゃん!! 目を覚ましたぞ彼女!!」
夏「よかった!! 助かったよおじさん、駆けつけてくれてありがとう!!」
拓蔵「言ったろ? これは300m先まで見渡すことができるって」
と、双眼鏡で高丘の顔を覗き込んで。
高丘「うっわああああ!!」
と、立ち上がり海まで猛ダッシュ。
高丘「おえええええ!!」
と、吐く後ろ姿。
拓蔵「(見ながら)あれだけ動けたらもう安心だな!? 彼女」
夏「あ……ちなみに彼女じゃなくて彼だと思うよ?」
拓蔵「え……? 男?」
夏「(笑顔で)うん」
拓蔵「うっわああああ!!」
と、立ち上がり海まで猛ダッシュ。
拓蔵・高丘「おえええええ!!」
と、二人並んで吐く後ろ姿。




