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ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
第七話 『ほうとう杯(後編)』
113/206

第七話 007

○同・元のアリーナ内の試合会場

柏原М「立花さん、正直あなたともう一度戦えるとは思っていなかった。しかも決勝というあの時と同じ舞台で」

夏М「マジかよ……試合前に柏原さんに言われたけど、ウチはこんな相手に市民大会で勝ったのか……」

   ――両者左構えでステップ。

恵介М「しっかりしろ夏!! あと2点取られたら試合終了だぞ!?」

   と、赤0-青6のスコアを見ながら。

柏原М「一気に決めちゃうからね!?」

   柏原、左前手突きで突っ込む。

記者A「柏原が仕掛けた!!」

夏М「あんたは確かに強い。でもちょっと……手の内を見せすぎちゃったよな!?」

   夏、柏原に対して真っ直ぐ突っ込み、前手突きを顔の前で内側にさばく。

   同時に左腕で柏原の奥襟を掴み、柏原の上手にお尻をねじ込み左足を入れる。

柏原「えっ!?」

   ――足を掛けられ、体をぶつけられた反動で綺麗な円を描いて倒れる柏原。

   すかさずお腹に突きを極める夏。

主審「止め!! 赤、中段突き、1本!!」

   ――スコアは赤3ー青6。

   盛り上がる会場。

編集長「あの動き……思い出した!! 立花 夏!!」

記者A「え?」

編集長「彼女は市民大会中学生の部の決勝戦で、当時無敗だった柏原に唯一土を付けた」

記者A「ええっ!?」

編集長「あのあと名前を聞かなくなって忘れていたが、まさかここでまた彼女を見れるとは……」

記者A「じゃあこの一戦は、柏原にとって悲願のリベンジマッチってわけですか!?」

柏原М「今の動きだ。一つ一つの動きに凄くワクワクする。本当にありがとう立花さん」

   と、開始位置で輪受け。

監督М「立花 夏、6点差からでも諦めずに大技を狙いにいける強さ。そしてその動きは、決して柏原に引けを取っていない……」

主審「続けて、始め!!」

   ――両者左構えでステップ。

夏М「ここで一気に追いつく!!」

   と、左前手フェイントから右上段逆突きで突っ込む。

   柏原、右の上段突きを顔の前でサバく。

夏М「もらった!!」

   と、柏原の正面で体を左後ろに回転させ、左足でサソリ蹴りを出そうとする。

みんな「サソリ蹴り!!」

恵介М「焦り過ぎだ夏!!」

   柏原、左腕を上げてサソリ蹴りをガード。

   同時に夏の右軸足を内に払い、倒れる夏の片腕を支えながらお腹に突きを極める。

主審「止め!! 青、中段突き、1本!!」

   ――スコアは赤3ー青9。

   盛り上がる会場。

加奈「夏先輩の必殺技が……返された」

北川「今の対応だと、サソリ蹴りを完全に読まれていた。まあ瞬時に一本に繋げる辺り、流石としか言いようがないが」

夏М「くそっ……また6点差か」

   と、立ち上がろうとして右足に痛みが走る。

夏「つっ!!」

   ――足首を抑える夏。

音葉「夏!!」

   主審がドクターを呼び、いったん安全域で治療を受ける夏。

恵介М「ここまでか……」

   と、座って治療を受けている夏を隣で見ながら。

恵介「夏、もういい……(2Fの観客席に座る監督を見て)もう十分監督にもアピールできたし、(進道を見て)先生にも恩返しができた」

 「もう棄権――」

夏「ウチは……納得いかねぇな。兄貴の優しさから出た言葉だろうけど」

恵介「だけどその足じゃお前――」

夏「ウチは進道道場じゃ兄貴みたいに優秀な生徒じゃなかったかもしれない。真中みたいに人懐っこい生徒じゃなかったかもしれない」

恵介「……夏」

夏「でも今は、ここで優勝することが、暴力事件の最後のケジメだと思ってるんだ」

 「自分でそう思い込みたいだけなのかもしれない。ただ一つ言えることは、中三の頃とは全然違う」

 「今は色んな人たちの思いが伝わってくる。戦っていて分かるんだ――」

[進道、鬼島、峰山、北川、お花見レギュラー四人、お花見応援団、音葉を写す]

夏「ここまでみんなで一生懸命繋いできたバトンを、こんな形で落としたくはない」

   ――ドクターに一礼して立ち上がる夏。右足首には包帯。

夏「(恵介を力強く見て)足を引きずってでもいい、ウチは今を――あきらめない」

   × × ×

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