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ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
第七話 『ほうとう杯(後編)』
112/206

第七話 006

○同・アリーナ入口の喫煙スペース

   ――二羽のカラスが電線から順番に飛び立っていく。

   それを見ながら、ゆっくりとタバコの煙を吐き出す編集長。

編集長М「まさか南妹が2ー1の大逆転勝利を飾るとは……」

記者A「(駆けつけて)いつまで一服してるんスか編集長!?」

 「もう立花の足のチェックが終わって、大将戦が始まってるっスよ!!」

編集長「分かった!! いま行く!!」


○同・アリーナ内の試合会場

   ――盛り上がる会場。

   開始位置に立っている立花 夏【たちばな なつ】と柏原 縁【かしわばら ゆかり】。

主審「青、上段突き、一本!!」

   ――膝に手をつき、息を切らす記者A。隣に編集長。

編集長「(驚いた顔で)どういうことだ……」

 「開始15秒で柏原の6点リードだと!?」

   と、大型モニーターのスコアを見て。

記者A「(モニターを見て)今のリプレイが出ます!!」

   ――左前手フェイントから右中段前蹴りで突っ込む左構えの夏。

   夏の左側に入り攻撃をかわす左構えの柏原。

   夏が蹴り足を下ろした瞬間に足払いをかけ、崩れた夏の肩口を片手で掴み引っ張る。

   その勢いで倒れた夏の顔面に突きを極める柏原。

編集長「おいおいおい!! なんて戦いだ……ビデオは!?」

記者A「(カメラを指差して)大丈夫っスよ!! ちゃんと固定して動画モードにしてきましたから!!」

編集長「6点差ってことは、今のが決まる前に柏原が3点取ってるってことだろ!? 柏原ならまさか――」

   と、カメラの映像を確認する二人。

   ――両者互いに左上段突きで突っ込む。

   柏原、夏の突きを突き受け(突きの腕でガード)で流し、伸ばした左手で夏の奥襟をつかむ。

   奥襟を引っ張り、夏を足元に倒して顔面に突きを極める。

編集長「最初の攻撃もやはり……崩しからの一本か」

南姉「『崩しの柏原』恐るべしや。立花はんも戦いながら驚いとるやろな」

松沢「お? 少しは落ち着いた?」

南姉「(ニヤリ)まあな」

南姉М「(真面目な顔で)それにしても飛ばし過ぎやでゆかごん。大将戦の前に先生から言われたことがそんなに嬉しかったんか?」

主審「続けて、始め!!」

   ――両者左構えでステップ。

   二人に声援を送る応援団。

監督М「附属高校は柏原が来てから一気に強くなった。そして今年はまた一段と強さに磨きがかかっている」

 「(進道を見て)これが進道先生の指導力か……」

進道М「あんなに楽しそうに試合をする柏原は初めてだ……夏のことを伝えて正解だったか」

柏原М「(少し微笑んで)あの子が……まさか立花さんだったなんて。そう、私の戦い方はあの時からより鮮明に確立されたようなもの――」


○柏原の回想・通学路(2月・夕)

   ――歩道を歩く柏原と南姉(中3)。制服姿。

柏原「市民大会!? どうして今さらそんな大会に?」

南「ほら、ウチら団体戦組手で全中の大会も連覇したんやから、何かこう新しい刺激っちゅうか、気分転換が欲しいと思わへん?」

柏原「気分転換ねー」

南「それとウチも、一度本気でゆかごんと勝負してみたいと思ってるんや」

柏原「ともやんと本気の勝負かー……じゃあ市民大会に出ようかな!?」


○柏原の回想・小瀬波スポーツ公園・武道館エリア・第一武道場(3月中旬・午後)

   武道場入口には『第45回 甲府市空手道市民大会』の文字。

   中学生女子決勝戦で夏(メンホー着用、大会用の赤帯)に奥襟を掴まれ、倒されると同時にお腹に突きを極められる柏原(青帯)。

柏原М「うそ……」


○柏原の回想・山梨学園大学附属高等学校空手道部道場・外観~道場内(5月・午後)

   ――桜が散った道場外観を写す。

進道「今日から君たちを教えることになった進道道場師範の進道 拳だ」

   と、道場内でみんなに挨拶。

   ――ハッとする柏原(高2)。

   × × ×

[フラッシュ]

   市民大会で夏の空手着に書かれていた『進道道場』の文字。

   × × ×

柏原「え……? あの子が空手を辞めたってどうしてですか!?」

   と、進道先生に詰め寄って。

   ――他の生徒たちは練習をしている。

進道「理由は教えられないが……」

柏原「(うつむいて)……そうですか。私が大会で初めて負けたあの子が……」

   柏原の回想終わり。

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