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ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
第七話 『ほうとう杯(後編)』
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第七話 004

アナウンス「中堅戦、赤、お花見女子高等学校、真中 汐音【まなか しおね】!!」

真中「はい!!」

アナウンス「青、山梨学園大学附属高等学校、梅田 倉子【うめだ くらこ】!!」

梅田「はい!!」

   安全域から一礼し、開始位置へ向かう二人。

   ――二人に声援を送る応援団。

観客「あの二人……すごい体格差だよな?」

   と、ざわつく会場。

恵介М「本来はここに夏を当てて試合を決めるつもりだったが、怪我のアクシデントで急きょ大将に回してもらった」

 М「(前のめりになって)繰上げで真中になったとはいえ、この対格差はキツい……」

進道М「(前のめりになって)今は敵だが……頑張れよ真中!!」

主審「勝負、始め!!」

   真中、左構えでステップ。

   梅田、左構えでステップを踏まずにどっしりと構える。

真中М「すごい迫力……まるで山のよう。……でも!!」

   と、上段突きで突っ込む。

梅田「ふぬっ!!」

   梅田、左前足を伸ばして真中の体をブロック、真中を寄せ付けない。

真中「やぁー!!」

   と、何度も突っ込むが、梅田に動きを止められる。

夏「あの体格差では、マトモに突っ込んでも弾かれるだけだ……」

野宮「まなっぺが真っすぐな性格なのは分かるけど、どこかでワンフェイク入れないと」

大木「のんべえ……たまにはまともなことを言うんだな?」

野宮「たまにはな」

南妹「頑張れまなちゃん!!」

南姉「さすが梅田はん。開始位置から一歩も動いとらへん」

柏原「恵まれた体格だよねー? 人ごみにいてもすぐに分るし」

南姉「そっちかい!!」

真中М「(息を切らして)ダメだ……どうすれば……」

   と、恵介をチラ見する。

   ――真面目な顔で、鼻の穴に人差し指と中指を突っ込んだ恵介。

真中「ええっ!?」

恵介М「合宿を思い出せ真中!! 真面目なお前はもっと頭を柔らかく!!」

   ――うなずく真中。

恵介М「……通じたか」

   と、ハンカチで手を拭きながら、ふと視線を感じて進道を見る。

   ジーッと一部始終を見ていた進道。

恵介「のわっ!?」

   ――進道、静かにうなずく。

恵介М「(真中を見て)先生も見ているぞ真中!!」

真中「やあーっ!!」

   と、左前手突きで突っ込む。

梅田М「(左前足を伸ばして)同じことを!!」

 М「! フェイント!?」

   真中、梅田の前蹴りに合わせて体を後ろに回転させ、前蹴りをかわす。

   すぐさま梅田の上段にワンツーの突き。

真中М「(右腕を伸ばして)いっけーっ!!」

梅田「くっ」

   梅田、一歩下がりながら前手で突きをはたく。

梅田「えいやああ!!」

   と、真中の顔面にカウンターの突きを決める。

   ――驚くみんな。

主審「止め!! 青、上段突き、有効!!」

   ――スコアは赤0ー青1。

   盛り上がる会場。

音葉「なに今の!?」

加奈「あの体格で……」

春香「すっごく速い!!」

北川「……あれが全国レベルの動きだ」

進道М「真中よ……この力の差を体験できたことは、ある意味幸せだったのかもしれないな」

真中М「速い……それだけ自分で何を仕掛ければいいのか狙い所がはっきりとしている」

   と、開始位置で輪受け。

真中М「だったら――」

主審「続けて、始め!!」

   梅田、左構えでどっしりと構える

   真中、左構えで前後にステップ。

北川「考えたな真中」

春香「え?」

北川「前後にステップをすることによって縦により速く飛び込むことができる」

春香「おおぅ」

北川「そしてステップの歩幅やタイミングをずらすことにより、待ってる相手からするとかなり守りづらい」

真中М「私は――」

   真中、左前手突きで突っ込む。

   梅田、左前足を伸ばしてブロックしようとする。

梅田「なっ!?」

   真中、一瞬下がり梅田の前足を避ける。

真中М「何度でも――」

   もう一度踏み込んで右追い突きを出す真中。

   梅田、すかさず下がり左前手で追い突きをはたく。

   真中、その場からジャンプして左追い突きで梅田の顔面に突っ込む。

梅田М「! 間に合わない!!」

   と、右手で顔面をガード。

   真中、左追い突きをフェイントにして、右手で梅田の肩の後ろに背刀(手刀のように4本指を伸ばして人差し指の付け根側で攻撃)を決める。

   ――驚くみんな。

真中М「私は何度でも、カウンターの上をいく!!」

主審「止め!! 赤、上段突き、有効!!」

南妹「やったまなちゃん!!」

夏「よっしゃ同点!!」

   ――スコアは赤1ー青1。

   盛り上がる会場。

松沢「ありえねぇ……あのクマ子が背後を取られた」

南姉「しかも背刀って……えらい古風な攻撃やな」

進道М「空手に対して勉強熱心だった真中だからこそ出た技か……そうだな、お前の目はまだ死んでない!!」

真中М「ここで負ける訳にはいかない!! だって立花先輩をほうとう杯に誘ったのは私なんだから!!」

   と、開始位置で輪受け。

柏原「点を取られた後にクマ子の目つきが変わった。そろそろ出るかもね?」

南姉「せやな、今の攻撃で完全に目が覚めた感じや。腹ペコのクマほど怖いものはないでー」

主審「続けて、始め!!」

   真中、左構えで前後にステップ

   梅田、左構えでステップ。

真中「なっ!?」

梅田「ええい!!」

   と、間合いを詰めて足払いを狙う。

真中「えっ!?」

[ホワイトアウト]

   × × ×

   ブーッ!! と試合終了のブザー。

   ――赤1ー青7のスコアを写す。

主審「青の勝ち!!」

   ――盛り上がる会場。

進道М「(目を閉じて)あの体格、いや、体重差で崩しに転じられたら、やはり厳しいものがあったか……だがよく頑張った真中!!」

   と、コーチ席で腕組み。

   × × ×

真中「すみません、1点を返すのがやっとでした……」

   と、レギュラーの元に戻ってきて。

夏「心配するな。南が次勝って、きっとウチにつなげてくれる!!」

南妹「わ、私!! まなちゃんのために、夏先輩につなげるために……」

 「(首をふって)ううん、自分のために頑張ります!!」

真中「(安心して)……南ちゃん」

   × × ×

梅田「あんな小さい相手に何度か下がってしまった。しかも背後を取られたのは初めてだ」

   と、レギュラーの元に戻ってきて。

松沢「チビにはチビなりの意地があんだ。クマ子には一生分かんねえよ」

梅田「そうなんだ……ほめてくれてありがとう」

松沢「ほめてねぇよ!!」

柏原「ともやん。立花さんとやりたい気持ちはあるけど、試合を決めちゃっていいから」

南姉「もちろんそのつもりや。山梨学園の部長として、自分の妹に負ける訳にはいかへんからな」

   と、メンホーを被りながら青の安全域へ向かう。

   × × ×

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