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タバコ 3

作者: そらみみ

パソコンの電源をいれ、座りすぎて変形してきた座布団の上へ

吸いたいと言うよりも、もう癖になってしまった一連の動作でタバコに火をつけて

ひと吸いし 肺まで吸い込み吐き出した


いつもの様にメールソフトを起動し、メールのチェック

使っているメールソフトは「Thunder Bird」

青い鳥がキャラクターの定番ソフトだ

ただメールチェックの度に頭の中を例の曲が流れ、揃いの制服のマリオネットが

無表情のまま踊り狂うイメージが浮かぶのは秘密だ


「?」


このソフト、迷惑メールを自動でゴミ箱に入れてくれる大変便利な機能があるのだが

大抵何通かはそのフィルターを抜けて残ってしまう

件名から迷惑メールかそうでないかを判断しながらそれらをチェックしていると一通

妙な件名のメールがあった


「全国精霊組合執行部日本支部西日本支社?」


これ 開いたらまたややこしいことになりそうだと 心ではわかっていたのだがつい

クリックをしてしまっていた


「こんばんわ」


モニターいっぱいにいかにも組合員という風情のさえない男の顔がひろがった


「私、全国精霊組合執行部日本支部西日本支社九州ブロック担当 メールの精霊と申します」


なんだかわかるようなわからないような長ったらしい肩書きの精霊が17インチのモニターを占領していた


「まにあってます」


男が自己紹介を終えるか終えないかの最後の言葉にかぶせるように俺は答えるが、男はひるまず続けてきた


「おくつろぎの所、大変恐縮ではございますが他の精霊からの報告によりますと、どうもあなた様は願いを一切なさらないとか?こちらに間違いはございませんでしょうか?」


ああ、タバコにコーヒーね、あいつら上役にちくりやがったな とか考えながら無視してメールチェックの続きをしようとメールの精霊の顔がないスペースにメールソフトのウィンドウを移動する

と、

こいつめ 移動した先に素早く顔をかぶせてきやがる

しばらくそんないたちごっこを続けていたのだがいい加減疲れたのでしょうがなく


「で、その何とか組合の何とかさんが何のようでしょうか?」


と聞いてやることにした


「全国精霊組合執行部日本支部西日本支社九州ブロック担当 メールの精霊です

はい、なぜあなた様がそこまで願いを拒否するのか、理由をお聞かせ願いたく、また願わくばあなたの願いを叶えたく、伺わせていただいております」


「別に特別願いなんてないし、ゆっくりとした一人の時間をすごしてるんだから邪魔するなってことだよ」


と簡潔に説明してやった


「でもですね、あなた様も組合員なんですよ?ちゃーんと組合費もいただいておりますし、願いを叶えるのは権利であると共に義務でもあるわけなんですよ」


なんていいやがる ちょっとまて 俺組合費なんて払った覚えないぞ?とその旨伝えると


「いいえぇ、お支払いいただいておりますとも あなた様がタバコを買おうとして落とした側溝の蓋の穴に入ってしまった10円玉や、缶コーヒーを買おうとして自動販売機の下に転がっていってしまった50円玉などちゃあんといただいておりますですよ」


そう言う事だったのか 落としたと思って探しても見つからないはずだ

俺は長年の疑問が晴れた気がした


「でも願いなんかないよ もう一人にしといてくれよ 一日の中でこの時間が一番俺の心は安まるんだよ」


俺はこの願いこそ叶えてくれよとばかりにまくしたてた


「そうは参りません、もっとこう、いかにも願いですってな願いでないといけないのです」


メールの精霊は熱っぽく語ってきた でも無表情なのがちょっと怖い


このままじゃらちがあかないと とうとう俺は適当な願いを言うことにした


「じゃ、世界平和」


「は?」


と精霊


「だから、世界平和 世界から争いとか殺人とか無くしてよ いかにも願いっぽいでしょこれなら」


どうだとばかりに俺は胸を張った

これで俺の静かな時間が戻ってくるだろう 俺は何とか組合のメールの精霊の返事を待った


「よいでしょう その願いを叶えましょう」


その言葉が俺の聞いた最後の言葉となった


次の瞬間 全世界から 人間が消えた

これもうタバコ関係ないよな

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