きっかけ (5)目撃。
あれから2ヶ月。植木はあれからBジム会長花田とバーのマスター斉藤と共にボクシングを励む日々。
己を忘れただひたすらサンドバック、ミット、シャドー、スパーリングに励む。
素質があったのか最近になってようやく基本動作は動けるようになり前よりいくらが体系ががっしりしてきた。性格も徐々に変わってきたようだ。
そんなある日植木の会社である噂が広まっていた。
植木の勤める大手証券会社。「営業部第3課」
業務中、植木の周りで噂話の声が聞こえる。同僚「おい、聞いたかよあいつがさぁ・・・・・・」
「聞いた聞いたいよいよ始まるらしいぞ。」
「何が始まるんだよ」「馬鹿。あれだよあれ。」
すると営業課第3課課長がドアを開けて入ってきた。
課長の声が聞こえる。「皆聞いてくれ。噂にもなっているだろうがうちの課から1名を除名することになりました。」
第三課のどよめきが聞こえる。
「誠に残念なことです。除名された人は1ヶ月以内にこの課からいなくなります。つまりリストラです。」
「我が社でこういうことが起きるのは大変遺憾なことではありますがこれは正式決定であります。詳細は人事部の決定次第後日個人的に呼ぶのでそれまで待機してください。」
震える植木。
すると課長が隣に座る。「植木!おまえまだここにいたのか、こんな暇をしてるならとっとと契約最低でも3件取ってこい!今すぐだ!」
植木は課長に無言で平謝りし去って行く。
同僚が課長に話しかける。「課長、あいつわかってるんですかね?」「ほんとだよ。リストラされることも知らないでさ。ボクシングなんて始めちゃってさ。」
課長が答える。「えっあいつボクシング始めたのか?」「そうですよ。あいつこの近所のBジムに通ってるみたいですよ。」
課長は「まあもう少しであいついなくなるからそれまでの辛抱だよ。我慢してくれ。代わりが入るみたいだから。」と皆植木がリストラされることを決め付けていた。
廊下を歩く植木。気がつかず植木を歩く廊下の壁に貼ってあるポスターを通り過ぎる。
ポスターの内容は「会社対抗。ボクシング愛好会タイトルマッチ!社員(役員)王者決定戦!出場者募集!」優勝者には賞金と(秘)特別が授与されると書いてあった。
数日後。同じく営業第3課。業務中。課長が焦るように現れて植木の後ろについて声を荒げて大声で怒鳴り散らした。
課長「おい!!!どういうことなんだよ!!ふざけんな!」なんでお前リストラじゃねえんだよ!」
植木と同僚は驚きを隠せなかった。植木は「えっ?なんのことですか?」と尋ねた。
課長は「何ですかじゃねえんだよ!なんで使えないお前がリストラされねえんだっつってんだよ!社長の気まぐれでリストラ取り消しになっちゃったじゃねえかよ。」
周りはホッとした反面植木が辞めないことに対して残念がった。
植木は「あっんじゃーよかったです。あっそれと契約課長の言ったとおり3件取りました。んじゃーじかんなんであとは帰りますね。」
課長が引き止める。「おい。またお前ボクシングでも行くのかよ。行ったってなんにもかわりゃしねんだよ馬鹿。」
植木が答える。「人が何処行こうが勝手です。では。」なにか自身に満ち溢れて答えた。
周りは止めもせずに知らん顔。その場を去る植木。
廊下を歩く植木。すると反対からスレンダー系美女社内ナンバー1広報課の大平がきた。植木とは同期入社で幼稚園の頃から大学まで同じで所謂幼馴染である。
すると大平が話しかけてきた。「優くん、お疲れ様。」
動揺しながらも恥ずかしがりながら小言で答える植木。「おっお疲れ様。」気遣うように話す大平。
「帰り?」「うん。」「これからボクシング?」「うん。」「試合とかするの?」「まだ。」「そうそう。今度ね。全会社内でボクシング大会があるの知ってる?」「知らない。」「出てみれば試合?」「んー考えてみる。」「申込みがね実は明日までなんだ。」「へー。」「これよかったら読んでみて。気が向いたら私のメールにでも送ってね♪書いておくから。」「分かった。ありがとう。」「んじゃーがんばってね。」軽く会釈してそのまま立ち去る。
大平のことには全く気にも留めていなかった植木。しかしなんかずーっとBジムに行くまでの間彼女のことばかり考えてしまい、ついつい花田会長と斉藤に相談もせずに出場するというメールを送ってしまった。
Bジム。花田会長、斉藤の前に植木がいる。すると植木が出場するということを話す。喜ぶ二人。花田会長は「おお!そうかそうか!そんなのあるんだな。丁度いい腕試しじゃないか。ただ気をつけろよ。ボクシングはリズミカルさと瞬発力が大切だからな。焦らずにがんばれ!」
植木は答えた。「ありがとうございます。」
斉藤は質問した。「ところで試合はいつなんだ?」「はい。東京の後楽園ホールで再来月です。」
斉藤と花田は声を合わせて驚く。「えっあそこでやるの?金あんなぁ。。。」
花田は植木に「んじゃーさっそく試合に向けて始めるか!」植木は驚く。「えっ今からですか?」斉藤は怒鳴る「今からやんなくていつからやるんだよ!今からしかねえんだよ!時間がねえじゃんかよ時間がよ!」
「はい。」
練習時間ぎりぎりまで練習に明け暮れる植木だった。
ビルの外から2階を見ている大平。植木がサンドバックを打っているのが見える。
小声で「がんばって。」「優くん応援してるから今度はがんばって。」
聞こえたのか聞こえないのか笑みを浮かべながら窓を背中にしてサンドバックを打つ植木。
「バンッバンッ」とサンドバックに打つ音がジム内を走る。いつもより気合が違った。