3章:病院
頭が痛い…。
なんだろう。
身体がすごく重い。
『う、うぅん』
「亜里朱!」
『お、母さん…?』
「よかった!お父さんお医者さんをよんできて!」
「あぁ!」
『お、父さん?』
ここ…どこ?
白い壁
高い天井
クリーム色のカーテン
白い引き戸
病院?…なんで?
「亜里朱!大丈夫?」
『お母さん…何があったの…?』
「覚えてないの?ま、まぁ無理ないわね。亜里朱。よく、聞くのよ。」
そういうとお母さんは真面目な顔で話始めた。
「亜里朱。あなたは交通事故にあったの。」
『事、故?』
「そう、亜里朱はね、大型トラックに跳ねられたの。運転手さんは即死だったようだけれど…亜里朱は事故から2日間ずっと寝てたのよ。」
『2日間…』
私は母の言葉を一つ一つ聞きもれがないように聞いた。
事故、2日間、大型トラック………チェシャネコ。
ズキン!
『痛い!』
「亜里朱!どうしたの?」
『大丈夫。少し頭が痛かっただけだから。』
「そう?」
『それより、お母さん事故の時に私を助けてくれた人がいなかった?』
「あぁ、その人ならもうとっくに退院なさったわよ。」
やっぱり、あの時私を助けてくれた人がいたんだ。
『どんな人だった?』
「そうねぇ、サラリーマンみたいな人よ。規則正しかったわ。」
チェシャネコさんが助けてくれたんだ。
『お母さん。私その人に会いたい。』
「そうねぇ。亜里朱を助けてくれたから、退院したらお礼を言いに行きましょうか?」
私が返事をしようとさた瞬間に白い扉が開いた。
「母さん!お医者さんを呼んで来たぞ!」
慌てる父が来たのだ。
「まぁまぁ、そんなに急がんでください。」
父の後ろにはサンタクロースを想像させる白い髭に小太りの男性が立っていた。
「あ、すいません。先生。」
父はペコッと頭を下げた。
「こんにちは、亜里朱ちゃん。私は亜里朱ちゃんの担当医になった田中だよ。よろしくね。」
ゆっくりとした口調で私に言い聞かせるように田中先生は言った。
「今の具合はどうかな?」
『えっと、今はなんともないです。あ、でもさっき頭痛がしました。』
「そうか。じゃあ、口を大きくあげて下さい。」
そう言われて私は大きく口を開けた。
先生は口の中を見てうん、と頷いた。
「じゃあ、次は遠くの方を見てくれるかな?」
『はい。』
その瞬間に眩し過ぎる光が視界に入る。
『!!』
私は思わず瞼を閉じてしまった。
「あぁ、ごめん、ごめん。驚かせちゃったね。大丈夫目を少し見るだけだから。」
わかっているはずでも驚いてしまう。
「うん。もう退院なさっても大丈夫ですね。」
「本当ですか?」
父が尋ねる。
「はい。」
ニッコリと微笑む先生。
「良かったわね!亜里朱!」
『うん。』
「今日はもう暗いので明日準備しましょう。でわ、私はこれで。」
そう言って田中先生は部屋を出た。