―9―ユオン
サンドイッチを食べているユオンを見ながら、ルディアは違和感を感じる。
昨日とは、違う人みたい。
ルディアは、昨日彼と交わした会話を思いだす。
昨日は、どこか棘があるが、子供らしい言い方が多かった。
しかし今日は、やや大人びた言い方が多い……。
「おはようルディア。君も起きたんだね、ユオン」
そんな疑問を感じていると。後ろからレジェルが声をかけてきた。
「兄様! おはよう!!」
「おはようございます」
ユオンは敬語だ。年上は敬うのだろう。
そういえば、ユオンって何歳だろう?
ユオンに関する疑問がまた増えてしまった。どうしてこうも気になるのだろうか。
よく考えると、今まで、パーティーなどで同じくらいの年代の子には何人も会っていたが、どの子もどこかの国の王族だとか、公爵家の跡取りだとかで、気を遣っていた。ユオンに対しては、そういう先入観が無いので、他の事に気が付く機会が多いのだろう。
私にとって気兼ねなく話せる同年代の子どもは、ユオンがはじめてだったのかもしれないな。
「ルディア、聞いているかい?」
レジェルの言葉にハッとする。
「ご……ごめんなさい兄様。何か言った?」
完全に自分の世界にいたので、レジェルが何か言っていたのを聞き逃してしまったらしい。
「まだ、具合でも悪いのかい?」
レジェルは熱を測るようにルディアの額に手を当てる。
「大丈夫。ちょっと考え事してただけよ。で、さっきなんて言ったの?」
心配するレジェルに、大丈夫だよ、と笑顔を向ける。レジェルは安心したように微笑んだ。
「昨日の事を聞こうと思ってね。君とユオンを呼びに来たんだ。父様が執務室で待ってるから行こうか」
「うん!」
ルディアは、レジェルに手を引かれて歩きだす。
今思えば、ルディアは昨日の事を何も知らない。
ちらっと隣を歩くユオンを盗み見る。すると、彼もこちらを見ていたようでバッチリ目が合った。ドキッとしたが、彼が何事もなかったかのように、視線を前にむけたので、ルディアも自然に視線を前に向ける事ができた。
執務室に着くと、レジェルが執務室の扉をノックする。
「父様。二人を連れて来ました」
レジェルが言うと、中から入りなさい、とアルスの声がして三人は執務室に入った。
執務室ではアルスとルイーゼ、それとカルスト、マルタが何かを話していたようだった。
「おはようルディア、ユオン。昨日はよく眠れたかい?」
「はい。昼までぐっすり寝ていたようです」
アルスの問いかけに、ユオンが苦笑気味に答える。
「ははは。そうか。それはよかった」
アルスが微笑み、執務室のソファに座るよう二人を促し、向かいの席に自分も腰掛ける。レジェルとルイーゼもアルスの隣に座り、カルストとマルタは、その後ろで立っていた。
まるで今から裁判をするみたいだな。
ユオンは、あながち間違いではないなと思いながら、小さく深呼吸した。
「さて、昨日の事について聞かせてもらおうか」
先程の微笑みは、どこにいったのか。アルスが真剣な表情で、裁判の開始を宣告した。