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第32世界  作者: 閃夜
Ⅰ はじまり
9/47

―9―ユオン

 サンドイッチを食べているユオンを見ながら、ルディアは違和感を感じる。


 昨日とは、違う人みたい。


 ルディアは、昨日彼と交わした会話を思いだす。

昨日は、どこか棘があるが、子供らしい言い方が多かった。

しかし今日は、やや大人びた言い方が多い……。



「おはようルディア。君も起きたんだね、ユオン」


 そんな疑問を感じていると。後ろからレジェルが声をかけてきた。


「兄様! おはよう!!」

「おはようございます」


 ユオンは敬語だ。年上は敬うのだろう。


 そういえば、ユオンって何歳だろう?


 ユオンに関する疑問がまた増えてしまった。どうしてこうも気になるのだろうか。

 よく考えると、今まで、パーティーなどで同じくらいの年代の子には何人も会っていたが、どの子もどこかの国の王族だとか、公爵家の跡取りだとかで、気を遣っていた。ユオンに対しては、そういう先入観が無いので、他の事に気が付く機会が多いのだろう。


 私にとって気兼ねなく話せる同年代の子どもは、ユオンがはじめてだったのかもしれないな。


「ルディア、聞いているかい?」


 レジェルの言葉にハッとする。


「ご……ごめんなさい兄様。何か言った?」


 完全に自分の世界にいたので、レジェルが何か言っていたのを聞き逃してしまったらしい。


「まだ、具合でも悪いのかい?」


 レジェルは熱を測るようにルディアの額に手を当てる。


「大丈夫。ちょっと考え事してただけよ。で、さっきなんて言ったの?」


 心配するレジェルに、大丈夫だよ、と笑顔を向ける。レジェルは安心したように微笑んだ。


「昨日の事を聞こうと思ってね。君とユオンを呼びに来たんだ。父様が執務室で待ってるから行こうか」


「うん!」


 ルディアは、レジェルに手を引かれて歩きだす。

 今思えば、ルディアは昨日の事を何も知らない。

 ちらっと隣を歩くユオンを盗み見る。すると、彼もこちらを見ていたようでバッチリ目が合った。ドキッとしたが、彼が何事もなかったかのように、視線を前にむけたので、ルディアも自然に視線を前に向ける事ができた。



 執務室に着くと、レジェルが執務室の扉をノックする。


「父様。二人を連れて来ました」


 レジェルが言うと、中から入りなさい、とアルスの声がして三人は執務室に入った。


 執務室ではアルスとルイーゼ、それとカルスト、マルタが何かを話していたようだった。


「おはようルディア、ユオン。昨日はよく眠れたかい?」

「はい。昼までぐっすり寝ていたようです」


 アルスの問いかけに、ユオンが苦笑気味に答える。


「ははは。そうか。それはよかった」


 アルスが微笑み、執務室のソファに座るよう二人を促し、向かいの席に自分も腰掛ける。レジェルとルイーゼもアルスの隣に座り、カルストとマルタは、その後ろで立っていた。


 まるで今から裁判をするみたいだな。


 ユオンは、あながち間違いではないなと思いながら、小さく深呼吸した。


「さて、昨日の事について聞かせてもらおうか」


 先程の微笑みは、どこにいったのか。アルスが真剣な表情で、裁判の開始を宣告した。

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