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第32世界  作者: 閃夜
Ⅴ ルシア学園
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―2―ヨウ

長らく空いてしまいました。

申し訳ございません。

 ゆらゆらと静かに揺れる部屋。船の客室なのだから揺れるのはあたりまえなんだけど、やっぱり快適な空間とはいいがたい。部屋には、床に固定されたテーブルといくつかの椅子があるだけ。壁に取り付けられた丸窓は海水の侵入を防ぐため、ぴっちりとはめ込んである。

 窓から外を覗くと水の精が楽しげに波間を飛び回っていた。その姿はとても幻想的で見惚れてしまう。


「何を見てるんだい、ルディア?」

「兄様」


 今この部屋にいるのはルディアとレジェルだけ。

 黄緑色の髪のお兄さんに話しかけられた後、すぐにレジェルが甲板に来て、ルディアがボーっとしている間に三人の間で何らかの会話がなされ、ユオンはヨウに連れられてどこかに行ってしまった。

残されたルディアはレジェルに連れられて今いる船室にやってきたというわけだ。


 二人は一緒に丸窓をのぞきこむ。 


「水の精がとっても綺麗なの。こんなに沢山いるのはじめて見たわ」

「このあたりの海域はリュシカの住処だからね。水の精が集まってくるんだ」

「リュシカの? そうなんだぁ。久しぶりに会いたいな」

「学園に慣れてきたら一度挨拶しに行くかい?」

「うんっ!」


 リュシカとは――水の精霊王とはずいぶん会っていない。それもそのはず。そもそも、精霊王がその住処を離れることはあまりないのだ。

ユオンと一緒にいると頻繁にゼフィルスと遭遇するのですっかり忘れていた。


「にしても、ユオンまだかなぁ」

「もうすぐ帰ってくるよ」


 兄様が部屋の入り口に視線を移すのと、扉が開いてユオンが入ってくるのはのはほぼ同時だった。


「ほらね」

「ほんとだ」


「なんだよ二人とも」


 ルディアが入ってきたユオンに駆け寄る。


「ユオン! おかえり」

「ただいま」

「何のお話だったの?」

「どんな飛竜だったか聞いただけさ」


 ルディアの質問に答えたのはあとから入ってきた甲板で会った黄緑色の髪と瞳を持つあの少年だった。

話によれば、ユオンが速攻で落としてしまったので、飛竜の種類が特定できなかったらしい。



「いやー、にしてもおっどろいたぞ。まさか入ったばかりの子どもが竜を落とすなんてな」


少年がユオンの肩をぽんぽんと叩くと、ユオンは触るなというふうに少年を軽く睨みつける。


「私もおっどろきましたよ。なんで甲板担当防衛官が持ち場にいなかったんでしょうね? ねぇ、ヨウさん?」

「……まぁ、それは置いといてー」


 レジェルに厭味を言われた少年は視線を彷徨わせると、思いついたようにルディアの前にかがみこんだ。


「ルディアちゃんだよな?」

「あ、はい! えと、はじめまして」

「くぁー! 相変わらずかっわいいなぁ! 俺のこと、覚えてる?」


「? えっと?」


 覚えてる? と言われてルディアは今まで会ってきた人を思い浮かべるが、該当する人物が見つからず首を傾げる。


多分、はじめましての人。


その結論はレジェルの言葉によって裏付けされた。


「無理ですよ。ヨウさんが屋敷に来たとき、ルディアは立ってもなかったじゃないですか」

「そっかー。だよなー。覚えてるわけないよなー」


 ヨウ。

それが彼の名前らしい。


「ヨウさんはお屋敷に来たことがあるの?」

「ああ」


 ずっと昔にちょっとなー。と言って、ヨウはルディアの頭をなでた。


 あれ?


彼に触れた瞬間、何故だか分からないけど背筋が氷った。

あり得ない物を見つけてしまった。

そんな気分になった。


 なんなんだろうこの人。ものすごく違和感がある。

服装がおかしいとか、言動がおかしいとか、そういう次元の話じゃなくて……。

もっと根本が、存在自体が違和感だらけというか……なんというか。

とにかく、この人はいるべき場所が違う。違いすぎる。

はやく戻さないと……大変な事になる。


根拠なんて何もないが、妙に確信できた。

ルディアの真髄ともいえる部分が、そう訴えかけてきたのだ。


 おかしいな、私、なんでこんな事考えてるんだろう?


「うっし、じゃあ俺持ち場戻るわ。二人とも学園ではいろいろとよろしくな」

「さぼりは校長に報告しときますよ」


「あ、あのっ!!」

「ん?」


 ヨウは出て行こうとしたが、ルディアが引き留めた。


「ルディアちゃん?」

「ルディア、顔色悪いよ?」


 ヨウとユオンが心配そうにルディアを覗き込む。

ルディアはというと、引き留めたものの何と言えば良いのか悩んでいた。

自分でもこの謎な感覚を理解できていないのだ。


 固まっていたルディアを後ろからレジェルが抱きしめる。


「ルディア? どうしたんだい?」


 優しく語りかけてきたのと同時に、レジェルからの『伝心』が頭の中で響いた。


――ルディア。私たちが心配する事じゃないよ。


はっとして振り向いたそこには一瞬だけ、でも確かに赤い右目が存在した。

意味を悟り、ルディアは恥ずかしげな笑みを作り出す。


「ごめんなさい。昔の事を聞きたかったんだけど、お仕事の邪魔しちゃ悪いですよね」


「なんだそんな事か。んなもん学園で暇があればいつでも聞かせてやるぞ」


 ルディアの笑顔を見て、ヨウは安心したように帰っていった。


 ユオンはルディアの作り笑に気付いたようで、何か言いたげだったが無理矢理意識をそらさせた。





 どうして貴方ががこの世界にいるの?



 それが、ヨウさんに聞きたかった事。

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