閑話 レジェルとルディアの攻防
「……ルディア」
はぁ。と大きなため息をするレジェル。
「なあに? お兄様」
ルディアはニコニコしながら少し首をかしげる。
「そろそろ、そこからどいてくれないかい?」
「い・や」
輝く無邪気な笑顔。
これが、対レジェル、アルスの最大の武器である事をルディアは知っていた。
カルストが教えてくれた。
はぁ。と再び大きなため息をするレジェル。
今日はレジェルが学園の尞に帰る日。いつもの事だが、ルディアは彼の妨害にかかっていた。
今回はレジェルが学園の尞に持っていく荷物の上にちょこんと座り、一向に動かない。
「はぁ。シルフ、シルフィード。すまないが、ルディアをどけてくれ」
「ルディア嬢くらい自分でどかせるだろ?」
シルフィードが面倒くさそうな表情で姿を表す。
「無理だ。可愛すぎる」
とんだ兄バカである。
「バカだろ」
シルフィードがぽそりとつぶやき、慌てて口をふさぐ。案の定レジェルにおもいっきり睨まれた。
「こんな事に我らを遣うのは、世界中どこを探してもお前だけだぞ」
シルフが呆れながら姿を表す。
二人がすうっとルディアの側を駆けると、突風が巻き起こり彼女を取り込む。
コオオォォォ
「きゃっ!」
荷物から引き剥がされ、ルディアの体が宙に舞う。三メートルくらいの高さまでで放り上げられ天井をかすめた彼女は、そのまま真っ逆さまに落ちていく。
落ちてる!?
衝撃に備えて、キュッと目をつむる。ボスンッという音とともに鈍い衝撃がはしる……が…
…あれ? 痛くない?
そっと目を開けると、目の前三十センチの所に床がある。
浮いてる? これは……
体をひねって辺りを見ると、ユオンが不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。
「……何事?」
「ユオン!!」
落下しても痛みがこなかったのは、ユオンが落下直前に風魔法でルディアを受け止めたからだった。
ユオンがサッと手を横に振ると、風がルディアを優しく包み地面に立たせる。
「さすがは、騎士だな」
シルフィードが、ぐるぐるとユオンの周りを旋回する。
「……眠」
そんなシルフィードなど視界に入っていない様子で、目をこすっているユオン。どうやら起きたばかりのようだ。服装も就寝用の服装だ。
「ユオンって、朝弱いのね」
「いや……朝弱いって……そう言う事じゃなくてな? 今何時だと思う?」
ユオンは、欠伸をしながらルディアに尋ねる。
「さあ?」
「朝の四時、十分前だ。お日様も昇ってないし、使用人達ですら起きてないよな?」
「嘘っ!!」
ルディアは、近くの窓までいって、バッとカーテンを勢いよく開ける。
「暗い」
辺りは真っ暗でしんとしていた。ルディアは今になってはじめて自分がとても早い時間に起きている事に気付く。
兄様……そんなに私に会いたくなかったの?
かなりショックを受けた。
「とりあえず、僕は二度寝しよう。おやす「ぁああっ!!」
「今度は何?」
「お兄様がいない!!」
「レジェルならさっきシルフ達連れてどっか行ったぞ?」
「えぇっ!?」
その頃……ファーラス家から少し離れた場所の上空。
「また今回も捕まったなぁ。ルディア嬢もよくやる!!」
ゲラゲラと笑い転げるシルフィードを横目にレジェルは、ため息を吐く。
今日何度目のため息だろうか。
そう思うと、再びため息が漏れた。
「まさか四時前に起きて来るとは思わなかったよ。ユオンが起きてきてくれて助かった」
もし、ルディアに捕まったら、また尞に着くのが門限ギリギリになってしまうところだった。罰則は、尞の庭掃除一週間。
可愛い妹には悪いが罰則は受けたくない。
まぁ、今回はユオンもいるし彼女も退屈はしないだろう。
「で、今から尞に行って開いているのか?」
「多分、六時には寮監が起きてくるだろうから、それまで待つよ」
「じゃあ、行くか」
「あ、ゆっくりでかまわないよ」
「「了解」」
彼等はゆっくり学園の尞の方向に進みはじめた。