―6―ユオンのお願い
それから5人でトランプをしたりすごろくをしたりと、とても楽しかった。
「ん?」
ババ抜きをしている最中に、ふとシルフが手を止める。
「シルフ? どうした?」
兄様が尋ねると、シルフは目をつむり耳を澄ます。
あ……。シルフがババ持ってる……。
見えてしまった。
次、私がシルフのカード引く番なのに……。
困って視線をさ迷わすが、どうしてもチラチラと見てしまう……。
見なかった事にしよう! と決め、視線を戻すと、目の前にいるシルフィードが悪い笑みを浮かべて何かを訴えてくる……。
「あはは……」
もう、笑うしかない。
「MEDYが魔窟から出たらしいぞ?」
「『風の噂』か」
風の精霊は、風が運んで来る微かな音『風の噂』を聴き取る事ができる。
「じゃあ、もうしばらくここにいよっか」
どうせ見つける事なんてできないだろう。ココにいれば安全だ。
「いや……もう、帰ろう?」
ユオンが伸びをしながら帰ろうと言い出した。
はい?
みんな目を丸くしてユオンを見る。
「ユオン? 気でも狂ったか?」
レジェルが、心配そうにユオンの顔を覗き込む。
「そうよ! 捕まったら終わりよ!?」
ユオンの前に、身をのりだして必死に訴える。
「大丈夫だよ。あ、でも、ルディアとレジェルには、ちょっとお願いがあるかも……」
言いにくい事なのか、こちらの様子をうかがい、反応を待つユオン。
何を言われるのかと、レジェルと顔を見合わせる。
「お願い? 何を?」
恐る恐る聞いてみると、
「しばらく、僕に近づかないで」
と言われた。
そのままユオンは立ち上がり、すたすたと屋敷に帰りはじめてしまう。
さっき視線を反らされた事を思い出したルディアは、本格的に自分は嫌われてしまったのか?
と悲しくなった。
ユオンの為を思って勝手に逃げたが、彼にとってはどうでもよかったのかもしれない。
いや、違う。ただ、自分が遊びたいがために、彼をつれまわしたのだ。
私……勝手だったのかな?
ギュッとレジェルの服の裾をつまむ。
レジェルはルディアの様子を見て、ふふっ。と笑った。
「大丈夫だよ。ルディア。彼は、君を嫌ってなんかいないよ。
むしろ……いや、いいや」
レジェルは何か言おうとして、やめた。そんな言い方をされると、続きが気になってしまうではないか。
でも、兄様がそう言うなら、きっとそうなんだろうな。
ルディアは、レジェルの言葉をとても信頼していた。一応、根拠もある。
「とにかく、ユオンには何か考えがあるみたいだよ?」
いこう?と、レジェルに手を引かれて、ルディアもユオンの後を追って屋敷に引き返すのだった。