―12―レジェル
ユオンとルディアがバルコニーで寝付いてしまった頃、彼等に人影がかかる。
そこには、例の紅い十字の右目をしたレジェルが立っていた。シルフとシルフィードも一緒だ。
「こんなところで寝たら風邪をひいてしまうだろう」
彼はそういうと、シルフとシルフィードに言って二人を各々のベッドに寝かせる。
「彼奴は悲しむ事を封じていたのだな」
シルフがユオンの部屋の方を見る。
「幼いのに、強がった子だ。昔の誰かさんを見ているようだよ。……いや……今もか」
シルフィードが、ニヤニヤしながらレジェルを見た。
「一体誰の事を言っているんだい? シルフィード」
レジェルは何処吹く風といった感じだ。そんな様子の彼を見て、シルフィードは頬を膨らます。
「まったく、子どもらしくない。魔力の強い者は、皆そうだ。可愛くない!」
何の反応も示さないレジェルに、シルフィードはつまらなくなったのか、からかうのをやめた。
「ルディア嬢は、優しい子だな」
今度はルディアの部屋の方を見るシルフ。
「強大な魔力保持者にしては、思考、行動が幼いと思っていたが……全くそんな事はなかったな」
「ユオンも、彼の魔力も、ルディア嬢さえいれば安心だな」
シルフとシルフィードは、お互いに頷き、微笑む。
「そうかな?
僕は逆に心配になったよ」
レジェルが、暗い表情をみせる。
月にサァーと雲がかかってゆき、辺りはより一層暗くなった。
シルフとシルフィードは、顔を見合わせる。
レジェルの、その瞳にはいったい何が映ったのだろうか。
「さぁっ。もう僕も寝ようか。おやすみ、二人とも」
レジェルは何事もなかったかのように微笑み、自室に帰っていった。
「……やはり、可愛くないな」
シルフィードの呟きは、夜の闇に消えた。