ブルーシェお前もか!?
前置き長くてすみません ほんわかするストーリーなのでぜひ最後までお楽しみ下さいませ
おれは当代の勇者パーティ所属のしがない暗黒騎士である。
世界に平穏が訪れるとまるで役目のように魔王が生まれそれに対する勇者が任命される。そして今の勇者は女性であった。最近では珍しいかもしれないが、初代勇者は女性であったし、50年前の歴代最強と名高い勇者も女性であったので、特別とかそういう話ではないので、どうか安心して聞いて欲しい。
さて、この勇者のパーティートップが女性なのと偶然にも優秀な魔法使いや戦士、ヒーラーの性別が重なりなんと女性ばかりである。
そしてこの間前衛のタンクのおれの唯一の話し相手が寿退社してしまった。勇者パーティーは人類のために身を粉にし働かねばいけないので、もうそんなリスクは負いたくないという。
よしおれも寿退社するかと思ったがなにせ相手がいなかったので、もうちょっとだけこのパーティーで頑張ることにした。
それにおれはこのパーティーで想いを馳せている人がいる。このパーティー、世間では眉目秀麗、才色兼美とか言われているが、おれからみると問題だらけのパーティーである。
その内情は関係者しかも気心しれた関係のものにしか分からないのは世の常なのかもしれない。
どうか聞いて驚かないでくれ。ここから先は機密情報であることを胸に刻んで欲しい。
勇者【おれと冒険者試験に一緒に受かった同期】気さくに話せる良いやつである。男にも女にもモテる。『ショタコン』
魔法使い【勇者にその魔法の腕を見込まれ旅の途中でスカウトされた】基本的に無口で良くわからないミステリアスな女性。『若い男の子が好き』
ヒーラー【勇者一行のお供にと聖教会から派遣されてきた】このパーティー唯一の常識人。みんなにたいしてもちろんおれにたいしても隔てなく優しい。パーティーの癒しとみんなから思われている。
戦士A近接【勇者に憧れてついた来た】このパーティーの勇者のやっかいファン。常にボディーガードをしている。
戦士B火力補助士【勇者ファンクラブ会長】斧の使い手。勇者の必殺技に合わせて追撃をしこれまで敵を過剰火力で屠ってきた。
タンク【おれの同期の寿退社していった前衛タンクの妹】ブラコンで何かとお兄ちゃんマウントをとってくる。お兄ちゃんに比べたらまだまだねが口癖。
以上+おれが勇者パーティーだ。敵を見つけたら我先にと剣をふるうおれが言うのもなんだが危ない連中である。悪人よ逃げるのだ命が惜しくばな。
おれたちの冒険は以外に順調だった。あの休暇が始まるあの瞬間までは!
その日はちょうど秋の木漏れ日がふりそそぐ大変快適な1日だった。おれは同僚のヒーラーに泊まっている宿の裏口にお伝えしたいことがあると呼び出された。
勇者「私たち…最近働き過ぎだと思うわけよ。それでね!いったんみんなで休暇にしない?みんなも休みたいでしょ!?」
うんうんと皆さんそろってうなずいた。このパーティーは勇者の人望あってこそのものなのでおれが予想していた通りである。それよりもおれはやっぱり告白(?)フラグがヒーラーさんとたっているのに気が気じゃないわけでして。早くこのミーティング終わらないかなあとただそう思っていた。
ようやく会議は終わり皆が荷造りをしているとき、おれたちは二人っきりで裏口にたたずんでいた。
外から小鳥のさえずりが聞こえてくる。秋は恋の季節とは都市伝説ではなかったのだとおれは感動し、お互いの瞳を見つめあっていた。
「あ、あのー。じ、実はですね…あなたにお伝えしたいことがありまして…」
うんうんと彼女の拙さもある可愛しい告白を受けることにし、笑顔で先をうながした。
「私実は…○○が好きなんです!でも誰にも言えなくて!」
え!?えーとぉ…つまりあなたは○○がお好きですと。つまりそれってぇ…
「ふう…やっとパーティーの方にお伝えできました。どんだけ誤解されているのが辛かったことか!」
彼女春の暖かな草原を吹き抜ける風の妖精さんのような可愛いし目を細めてまぶしいような笑顔をみせる。
一方告白されたおれとしては…今このときを現実と受けとめきれないでいた。
そ、そんな…彼女も、そっち側だったなんて。唯一の常識人だと思っていたのに。
「ブツブツ…もかよ。どうしてこんなことに。」
「え?どうかしましたか?」
おれはうつむいた顔を上げることができずに、肩を震わせながら声を絞り出した。
「ブルーシェお前もショタコンだったのかよぉーーーーーーー!!!」
「エヘヘ。実はそうなんです。」
照れてる顔も可愛いらしい。くそー。おれが勝手に信じていた常識人の同僚枠がぁ!
心の声(もうまぢ無理お家帰ろう)
「そ、そうかー。勇気をもって伝えてくれてありがとな。では休み明けにまた!」
「ちょっと!?まってくださいよー!って足早い!」
おれは荷物をわしずかみにし、戦略的撤退をした。その早さは魔王軍四天王が最速のカミナリ/デンキなみの早さだったと後に言われているそうだ。
特別にもらってしまった休暇。なんと3日も休めるという超お得な美味しいやつであった。
1日目は盛大に寝過ごした。惰眠をむさぼるのはなんとも贅沢な時間の過ごし方である。世界中の金銀財宝よりもときに価値があるのだ。
2日目はおれの年の離れた可愛い弟のお守りを普段かまってあげられないぶん兄弟の時間を過ごすつもりだった。ちょうどお昼を過ぎたころ、おれは弟が食べきれなかった朝食のパンケーキをサンドイッチへとアレンジしているとき、突如危険は訪れた。
「こんにちはー!暗黒騎士さんいらっしゃいますかー?」
ガチャり。おれは料理中なので弟が出迎えてしまう。
「お姉ちゃんは誰ですか?」
「私はヒーラーのブルーシェです。あなたのお兄ちゃんにはいつもお世話になっています。本当にかっこ良いお兄ちゃんがいて、うらやましいです。」
弟(このお姉ちゃん絶対良いひとだぁ!)
「お姉ちゃん。お兄ちゃんにあいたいですか?今台所にいます。」
「あらそうなのね。じゃあお邪魔してもよろしいかしら。」
「はい!お兄ちゃんも喜ぶとおもいます!でも、今おかーちゃんと父は買い物にいっててお家にいないの。ごめんね。ぐすん。」
あらあら泣かないのと彼女は弟くんを慰めていた。しかし涙は依然として止まらず彼女も困ってしまう。
仕方ないなあと彼女は弟くんを抱き上げあやすことにした。
「よしよーし。お姉ちゃんはなにも悲しくないですよ。ほーらね!」
笑顔であやすと弟くんはきゃっきゃっとはしゃぎだした。
「おーい。弟くん。誰か来てるのか?知らない人は家にいれちゃダメだぞー。ってあなたは!?」
「すみません。お邪魔しております。」
ペコリとお辞儀をする彼女と兄ちゃー!と嬉しそうにはしゃぎだす弟くん。
「弟を離してもらおうか。」
「あらあら。笑顔が怖いですわー。でもこのままもう少しだけ。」
「お姉ちゃおろして!」
「は、はい…」
すっとぼけるヒーラー。ここに暗黒騎士vsヒーラーの因縁(?)の対決が今始まろうとしていた。
よちよちと歩いてきた弟くん。
「お兄ちゃ、お姉ちゃ喧嘩はしないですよ 言うこと気かないとぼく泣きます。」
「ご、ごめんよ。弟くん!」
「私が悪かったわ!お姉ちゃんとお兄ちゃんはすっごい仲良しなのほらねー!」
腕に突然抱きついてきた。
小声(このショタコンがー!弟くんはショタコンには絶対渡さないからな!)
小声(あらー。あんなに可愛い子を独占するんですか先輩?あなたに人の心はありますか?)
な、なにをー!内心こんな感じだが、弟くんファーストを共有している2人は仲良しを演じるとこにした。
「お二人は仲良しなんですね!(キラキラッ)」
「そ、そーなんだよ。おれたちいつも助けあっていてな!汗(仕事で)」
「そーなんです!先輩にはいつもお世話になってまして汗!(仕事で)」
「そっかぁ。もう…にいちゃにもお嫁さん来てくれるのですね(感動した涙)」
「な、何て純粋でよい子なの!(感動した涙)私先輩のお嫁さんになりたいです!」
「は、早まるな!あとそろそろ離れてくれ!」
ガチャりただいまー!と両親が帰宅。
弟くんはなすべきことをした。
「こちらお兄ちゃのお嫁さんになりたいって言ってましたかのじょさんです」
お、お前。まさか。
あらあらまあまあ!
「私ブルーシェと申します。パーティーでヒーラーを担当しております。実は昔から先輩のことが好きでお慕いしておりました(好きの部分だけちょっとだけ嘘)」
「ふつつかな愚息ですが、あなたのような素敵な女性にもらってもらえる何て…」
「幸せにおなり。。。」
うっうっうと号泣し始めた両親。おれにはもう逃げ道は残されていなかった。
「彼女のこと今まで話せなくてごめん(付き合っている事実がなかったもので)でもこれから2人(と弟くん)で幸せに生きていきたいと思う。」
どうしてだろう。望まぬ形でこうも世界は回っている。でも悪いことだけじゃないと弟くんに抱きつかれて涙を浮かべる彼女を見てなぜかそう思えたんだ。
読んでくれてありがとうございます!




