友情育てば何になる?
適当に書いた駄文で申し訳ありません
「なぁなぁヒロ…」
「ん?」
それは昔の…普段と特に変わらない日の事だった…
俺こと「成瀬弘成」は…小学生の夏休みということもあって、生まれた時から家が隣同士で、家族ぐるみで仲の良い幼馴染の「加成我満」と一緒に、近くの公園で蝉取りをしていた。
そして休憩がてら、二人でベンチに座ってアイスを食べている時…不意に満が上記の言葉を口にしたんだ。
「どうした満?」
俺が満の言葉にそう返すと、満は真面目な顔をして俺に問いかけてくる。
「俺達さ、これからもずっと一緒だよな?」
「はぁ?」
俺は満の言葉にそんな間の抜けた声をあげ、呆れた顔をしてそれに答える。
「なに言ってんだよ満、そんなの当たり前じゃねぇか」
「ほ…本当か?」
俺の回答に満は目を輝かせてこちらに顔を向けた。
「マジだよマジ、大体保育園の時からずっと一緒で来年から中学だって一緒なんだぜ。今更お前とつるむのをやめる理由がねーよ♪」
俺のその言葉に満は更に顔を輝かせると…
「そっか…そうだよな、俺達はずっと一緒だよな♪」
「あったりめーだろ馬鹿、俺以外にお前の相棒が務まるかよ♪」
「ば…馬鹿ってなんだよ、ヒロの方が俺よりテストの点数低いじゃねーか!」
「お…俺は紙媒体で測定できるような人間じゃないんだよ!」
「測定できない程の馬鹿なんだろ♪」
「う…うっせぇよ!」
「……」
「……」
ぷっ…
「「アハハハハハ!!」」
些細な言い合いのあと、俺と満は同時に笑い合った。
これが俺達の昔からの関係性、たまに言い合いをしても…すぐにどちらかが笑ってしまい仲直り。
ちょっとクサい言い方かもしれないけど、俺達の友情はこの程度の言い合いで壊れる様な脆いものじゃない。
来年には中学に上がり、その後は俺の成績さえなんとかなったら高校も同じところに行くのもいいかもしれない。
その後進学や就職などで進む道が別れても、きっとこの関係は変わらないだろう。
俺はそう信じて疑っていなかった…
これからも満と一緒に馬鹿をやって…
偶にぶつかっても…すぐに仲直りして「あの時はさぁw」と、思い出話のネタになる。
そう信じて疑っていなかったんだ…
………つい数分前までは……
― ― ―
「はぁ…お前は本当に、昔からその辺が残念だよなヒロ!!」
「な…なんだよ満、なにいきなり大声出してるんだよ。俺そんなに変な事言ったか!?」
「……もういいや、今まで我慢してたけどこの際はっきり言わせてもらう!!」
「な…なんだよ、何を言うってんだ!?」
「ヒロ…俺は昔からなぁ…!!」ドンッ…!
「っ…!?…!?」ドサッ!
あれから時は流れ、俺達は来月には卒業を控えた高校三年生になっていた。
そして今現在、俺の部屋で二人でゲームをしていたんだが…その途中で俺が何気なく口にした言葉で、突然満が怒り出したのだ。
どうやら俺は…自分が気が付かないうちに満に不愉快な思いをさせてしまったらしい。
だけど俺には満が何に怒っているのかわからなかった、だってついさっきまで…二人で楽しくゲームをしてたんだからな。
一体俺は満に何をしてしまったんだろうか…?
俺はそう自問自答しながら、これまでの満との付き合いの思い出や、今日あったことを頭の中で思い出して考えた…
― ― ―
俺はあれから満の手助けもあって、どうにかそれなりの公立高校に入学できた。
満は当人の成績ならもっと上の学校にも行けたのに…
「お前といる方が学生生活楽しそうだしな♪」
なんて理由で俺に合わせてくれて同じ高校に入学した。
高校でも変わらず二人で一緒に過ごしていたし、俺達にとっては特にこれまでと変わらない世界だった。
ただ、あえて変化したことがあるとしたら満の変化だろう。
元から頭の良かった満は、成長期になると背も伸びて顔もかなりイケメンになった。それに俺に偏差値を合わせてくれた事もあるが成績は3年間ずっと1位で、しかもスポーツまで万能で、高校の3年間で陸上で全国にまで行っていた。
当然満は女子生徒には凄い人気だったし、噂では3年の間に50人にも告白されたなんて話もあった。
だけど結局…満は高校3年間の間に誰かと交際するということは無かった。
どうやら満は「昔から心に決めた人がいる」と言って全てお断りしているらしい。
女子生徒の中には、昔からの幼馴染の俺の所に「満君の心に決めた人って知ってる?」と質問しに来る子達もいたが、俺は全く見当がつかないので「さぁ?」としか返していない。
「保育園からずっと一緒だけど、俺アイツとそういった話したことねーもん。まぁいくら幼馴染と言っても、満だって俺に知られたくないこともあるだろ?」
俺が肩をすくめてそう答えると、女子生徒達は「はぁ…そうかぁ…」となにやら残念そうな顔をして、そのまま教室を去っていくのもお約束だった。
ただ、俺のところから去る時に女子生徒達は決まって…
「……ね…あれは…?」
「……君も…可哀想に…」
「……幸せ…にねぇ…」
となにやらブツブツと呟きながら去っていく。
ハッキリとは聞き取れないが、部分的に聞こえたところから想像するに…
「本当に使えない"ね"、自分が邪魔って自覚ないのかな"あれは"…?」
「満"君も"あんな幼馴染が居て"可哀想に"…」
「満君の"幸せ"を考えたら居ない方がいいの"にねぇ"…」
なんて言われてるんだろうなと想像できる。
まぁ他人にどうこう言われたところで、俺が満と距離を置いたりすることはないけどな。
俺はそんな事をボンヤリと考えながら、今日の授業も終わったから鞄を手にとって帰宅する事にした。
そうして下駄箱に向かって歩いていると、途中で「おぅヒロ、今帰りか?」と誰かが声をかけてきた。
俺はその声から誰かわかっていたので、そのまま声のした方向に顔を向けて言葉を返す。
「特に寄り道する予定もないしな、今日はこのまま帰るつもりだよ。満はどうするんだ?」
俺がそう言って質問を返すと、満は「なら一緒に帰ろうぜ、俺も部活引退してから暇だしよ♪」と返してきた。
「そうだな、どうせ帰り道は一緒なんだし一緒に行くか」
「おぅ♪」
そう言って俺と満は二人並んで歩き、そのまま校門を出ると家に向かって歩いていく。
そしてその道中で、満が俺に「そう言えばよヒロ…」と声をかけてきた。
「ん〜?」
俺が満の声に反応して満の方を向くと、満は「俺…アレを手に入れたぜ、先週発売された新作♪」と言った。
「新作…ってまさかお前、フラブラの新作手に入ったのかよ。俺も何件か周ったけどどこも売り切れだったのに!」
「部活をしてたお陰で早起きに慣れてるからな、発売日の朝イチで買いに行ったぜ♪」
「ちぇっ良いなぁ……あっそうだ、なぁなぁ満〜♪」
俺は拗ねたような舌打ちをしてから、ふとある事を思い出して満に声をかける。
「ん?」
満がこちらを向いたので、俺は「満さえ良かったらだけどよ…」と前置いてから自分の考えを口にする。
「明日は休みだし、俺の家に泊まりがけで遊びに来いよ。うちの親…満のとこのおじさんとおばさんの四人で旅行に行くって言ってたし。俺の家は住宅街の角で隣はお前の家だから、今晩はどんだけ騒いでも構わねーんだしさ♪」ニッコリ!
そう言って俺は満に…満面の笑みで「だから新作ゲーム持ってこい♪」とオーラを出して提案した。
「…んんっ…ゴホンッ!」
そんな俺の提案に、満は何故か一度間を置いて咳き込んでから…「スゥ~…ハァ~…」と深呼吸してから返事をしてきた。
「そ…それは良いな、どっちの親も居ね―なら怒られることもないしな…」
「だろぅ、じゃあそうと決まれば早く帰ろーぜ。あっ…折角だから夜食のお菓子や飲み物も買って帰るかなぁ〜♪」
「そ…そうだな…」
俺は上機嫌で満にそう言うと、今日の夜を楽しみに思いながら満と帰宅した。
そうして俺達は満が「飯食って風呂入ったらそっち行くわ」と言ったので…家の前で一度解散してお互いに夕飯と風呂を済ませた。
その後宣言通りに満が訪ねてきたので、俺はいつも通り自分の部屋へと通して一緒にゲームを楽しんだ。
そして夜も10時を過ぎた辺りで、俺達は休憩がてらジュースを飲みながら…いつもと変わらない世間話をしていた。
その時俺はふとある事が頭をよぎったので、夜のテンションもあってか満にそれを尋ねることにしたんだ。
「そういやよ満、今日また俺のとこに女子が来て…「満君が心に決めた人ってのは誰だ?」って訊いてきたぞ」
「っ!」ピクッ!
俺の言葉に満は、ジュースを注いていた手を止める。
「……それで、お前はなんて答えたんだヒロ?」
少し低くなった満の声に、俺は「あれ?」と思いながらも…特に気にはせず質問に答える。
「別に…いつも通り「知らねぇ」って答えたさ。実際俺も、お前の「想い人」が誰かなんて全然知らねぇしな。まぁ保育園からずっと一緒の俺にすら言わねぇんだから、その「心に決めた人」ってのはお前にとっちゃ不動の1位の存在なんだろうな。まぁお前の恋愛に俺が意見するのもおかしいし、俺は応援するぜ。上手くいったら俺にも紹介しろよ♪」
俺がヘラヘラとそう言葉にすると、満は飲んでいたジュースのコップを下に置き…
「…………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜………」
と心の底から呆れたようなため息を吐いた。
「なんだ、どうした満?」
俺がそう尋ねると、満は「お前…それ本気で言ってるのか?」と尋ねてきた。
「はぁ、当たり前だろ。俺はお前が選んだ奴なら絶対仲良くしてやるよ♪」
俺は笑いながら満にそう言うとさらに言葉を続けた。
「なんせ保育園からずっと積み上げてきた「友情」の相手なんだ。俺に出来ることならなんだってしてやるよ♪」
…プツン…
俺が満にそう言葉を発した次の瞬間…満の中で何かがキレた様な幻聴が聞こえた。
― ― ―
とまぁ、これがついさっきまで俺と満が共有していた状況だ。
そして今現在の状況だが、俺は未だに怒っているような表情の満に…俺のベットの上に上記の言葉を投げられてから押し倒されていた。
「えっ…ちょっ…み…満!?」
俺はあまりに突然の出来事に、頭が混乱して上手く言葉が出ない。
そんな俺に満は…自分の顔をググッと近づけると、俺の目を見ながら言葉を発した。
「馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけどよ、ここまで馬鹿だとは思わなかったぜヒロ…」
満はそう言うと、俺の両手を片手で纏めて押さえるとそのまま言葉を続ける。
「そんなに気になるなら教えてやるよ、俺がずっと昔から心に決めていた相手を…今…俺の目の前で俺に押し倒されてる当人にな♪」
「は…はぁぁぁぁぁーー!!?」
満の突然のカミングアウトに、満曰く「心に決めた人」当人の俺は驚愕する。
「えっ…ちょっ…お…お前の「心に決めた人」って俺のことだったのか満!?」
「そうだよヒロ…俺はお前が…小学生のあの時、お前に「ずっと一緒だよな」と聞いた時からお前のことが好きだ!!」
「っ///」カァァァ…
そんなにどストレートに好意をぶつけられると、流石の俺でもつい顔が赤くなる。
だけど何故だろう…不思議と俺は悪い気はしなかった。
そうか…俺も自分で気が付かなかっただけで、きっと俺も満の事が好きだったんだ。
そう理解すると、ついさっきの俺の言動に満が怒るのも理解できた。
そりゃあ自分が好きな相手に「好きな人って誰?」と聞かれたら怒るわ…
「ごめん…俺、全然お前の気持ちに気付いてやれなかった…友達失格だよな…」
そう謝罪する俺に満は「いや…俺の方こそ悪い…」と返し、押さえていた俺の手を離した。
「思わず気持ちが爆発しちまった、こんな事言ったらお前が困るのに…それでこれまでの友情が壊れるのが怖かったんだ…」
満はそう言うとベットから立ち上がり、俺に背を向けて部屋を出ていこうとする。
「怖がらせちまったな、やっぱり今日は帰るよ。許してくれとは言わねーけど、もしヒロさえよければ…また明日から俺と友達でいてくれ…」
そう言ってドアを開けようとした満を、俺はベットから起き上がると後ろから抱きしめる。
「ヒロ…んぅっ…!?」
満が困惑した顔で俺の方に顔を向けた時、俺はその満の後頭部を掴んで自分の唇を満の唇に押し付けた。
「怒ってないよ満、今気付いたばかりだけど…俺も満の事が好きだ///」
俺はそう言うと満の逞しい胸板に自分の顔を埋める。
「だから…今日はこのまま泊まっていけよ。今日は俺達の両親は居ないし、それに騒いでも誰にも怒られないんだからさ///」
「……いいのか?」
俺の言葉の意味を察したのか、満は確認するように俺にそう尋ねた。
そんな満に俺は顔を真っ赤にしながら、少し恥ずかしかったけどしっかりと頷いた。
「いいよ///…満にだったら…俺は満の好きにしてもらっても受け入れるから///」
「ヒロ///」
感極まった満が、俺に自分からキスしようとしたその時、俺は「あっ、だけど一つ条件があるから!」と指を立てて指示する。
「条件?」
満が俺にそう聞き返してきたので、俺は「そう、条件」と頷くと説明する。
「これまで俺達はずっと友情を積み重ねてきたからな、もし本当に俺の事が好きなんだったら…」
俺はそこまで言葉にしてから、少し自分でも恥ずかしいのを堪えて続きを口にする。
「こ…これからは友情とは別に、あ…愛情も一緒に積み重ねていくこと///」モジモジ…
「ヒロォォォーー!!」ガバッ!
俺のその言葉と同時に、満は俺に抱き着くとそのまま俺をベットに再び押し倒した。
「わっ…ちょっ…満…た…タンマ…タンマ…ちょっボタンを外すな、服の中に手を入れ…ふぁぁぁぁぁっーー///」
結局俺はその日一晩中…これまで知らなかった満の事を沢山教え込まれ、満も俺のこれまで知らなかった事を沢山学ぶことになるのだった。
― ― ―
その頃とある温泉宿では…
「ヒロ…そろそろ満君にアレコレされちゃってるのかしら♪」
「それにしても良かったの成瀬さん、うちの満なんかがヒロちゃんの相手で?」
「良いのよ加成我さん、満くんならヒロの事は安心して任せられるわぁ♪」
「そう言ってくださると母親冥利に尽きるわぁ、もし満がヒロちゃんを悲しませたりしたら…その時は満をしっかりとシバきますのでご安心を♪」
「「おほほほほほ…♪」」
そう言って笑い合う妻を横目に、お互いの旦那組は苦笑いを浮かべる。
「お互い妻には頭が上がりませんな成瀬さん…」
「そうですね加成我さん…」
「しかし、本当にうちの満で良いのですか?」
「まぁ一番は本人同士の気持ちを尊重しますが、妻の言うように満君なら、うちのヒロを安心して任せることが出来ます」
そう言って我が子である弘成の事を思い浮かべながら、成瀬父は「なんせウチのヒロは…」と言葉を続けた。
「もう高校も卒業という年齢だと言うのに、未だに自分の事を「俺」と言ってしまうお転婆な娘ですからね…」
「今後もどうぞ宜しく」
「いえこちらこそ…」
そう言って本人達の預かり知らぬところで、お互いの両親は最早「孫は何時かな♪」というレベルで公認していたのだった。
― ― ―
そして休日も開けた次の平日…
「あ〜…ダルい…」
俺は登校してから、身体の倦怠感で始業前の教室の中で…一人で机に突っ伏していた。
「ヒロ…大丈夫か?」
そんな俺に満が気を遣うように、そっと声をかけてくる。
「これが大丈夫に見えるか、ったく…インハイ出場経験者の体力に付き合わせやがって…」
俺が愚痴るように満にそう返すと、満は「うっ…それは悪かった…」と謝罪する。
そんな満に対して、俺は一昨日と昨日の疲れの八つ当たりから…思わずその場を考えずに文句を言ってしまった。
「大体だな、お前体力あり過ぎるんだよ。結局昨日の朝までずっとだぞずっと!!」
「いや…だからヒロそのな…」
「お陰で俺は昨日腰が抜けて…全然動けなかったんだぞ!」
「だ、だから昨日は俺が移動の時はずっとおんぶしてただろ…」
「当たり前だろが、お前のせいでそうなったんだからな!」
「わ…わかったから…わかったから落ち着けヒロ…」
「こっちのセリフだ馬鹿、俺が「少し落ち着いてくれ…お願いだからもっとゆっくり///」ってお願いしたのに、全然落ち着いてくれなかったじゃね〜…「ヒロッ!!」…なんだ!?」
ヒートアップした俺の肩を、満は両手でガシッと掴むと声を荒げる。
「俺への文句は後でいくらでも聞いてやるから、先ずは俺の話を聞いてくれ!」
「おぅ聞いてやろうじゃね〜か、一昨日と昨日にかけての俺への仕打ちに何か言いたいことでもあんのかよ!?」
俺がそう言ってフンスと腕を組むと、満は「あ〜…とりあえず今俺がヒロに言いたいことはたった二つだ」と前置いてから言葉を続ける。
「先ずは一つ目、これはお前の言う通り少し俺ははしゃぎ過ぎた。その件は謝罪するし、ちゃんと責任は取るから安心しろ」
満の言葉に俺は「お…おぅ…そうかよ///」と少し照れながら返事を返す。
そんな俺の反応に満は満足したのか、そのままもう一つの言いたいことを話し始める。
「そしてもう一つ、これはある意味一番今理解してほしいことなんだが…」
「なんだよ?」
「ここ…学校の教室…周り見ろ……OK?」
「あぁん!?」
満の言葉に俺が辺りを見回すと…
「おい…今の聞いたかよ…」ボソボソ…
「くっそ〜…満の奴羨ましいぜ…」ボソボソ…
「なんだよ…卒業式は来月のはずだろ、なに先にあいつ等二人卒業《意味深》してんだよ…」ギリギリ…
「ヒロ…大人になったのねぇ…」ボソボソ…
「ちょっと馬鹿なのは仕方ないけどね…」ボソボソ…
「ちぇ〜結局満君はヒロとくっついたか〜」ボソボソ…
周りのクラスメイトの奴等が、俺と満を遠巻きに眺めながら…ヒソヒソと話してるのが確認できた。
「…………あっ!!!」
そこで俺はようやく…自分と満がどこで話していたのかを思い出した。
「あっ…その…みんな…これはそのあのな…////」
俺がワタワタと手を振って周りに説明しようとしたその時…
「「二人ともおめでとーー♪」」
「「とりあえず満は爆発しろーー!!」」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉーー//////」
女子にも男子にもそんな風に祝福(?)された俺達は、卒業までの一ヶ月の間…全校生徒どころか一部の教員にまでいじられることになるのだった。
そして卒業式当日は、お調子者として人望のあるウチの校長が…何故かニヤニヤしながら変な「贈る言葉」を壇上で披露していた。
「え〜皆さん卒業おめでとう御座います、皆さんはこれから進学や就職などで社会に出ていくことでしょう。そんな皆さんに私から最後にこの言葉を贈ります」
「皆さんがこれから社会に出るにあたって、大切にしなければいけない「じょう」が三つあります」
そう言うと校長は後ろの黒板に三つの言葉を書き始めた。
「先ず1つ目は"根性"、世の中基本的にこれがないと生きていけません!」
「そして次に"友情"、苦楽を共にした友人と言うのは掛け替えのないものです。社会に出ても友人は大切にしましょう!」
「そして最後に"愛情"、他者を愛し、他者に愛される様な立派な大人になってください!」
校長はそこまで語ると「しかぁ〜〜し!!」と声を荒げる。
「この"友情"と"愛情"ですが、下の"情"が同じ事に皆さんはお気づきですか!?」
校長はそう叫ぶと「つまり、コレとコレをこうすれば!!」と「友情」と「愛情」の二つを斜めにした楕円でそれぞれ囲んだ。
「はい、ご覧の通り…二つの言葉を"情"という字を視点に囲むとなんと「ハート」が浮き出てくるわけですね!!」
校長はそう言って、黒板に描いたハートをバンッとその手で叩く。
「つまり二つを互いに積み上げていけば、やがてそれは「ハート」即ち「愛」へと進化するわけです!!」
「そしてこうなると、先程言った三つの"じょう"が二つに減ってしまう…。だから追加でこの"じょう"をこう!!」
そう言って校長は、「友情」と「愛情」で描いた「ハート」に鍵穴と鍵を描き足した。
「はい、これぞ正に三つの"じょう"ですね。皆さんはまず「根性、友情、愛情」を持って社会に飛び立ってください。そしていつかその「友情」や「愛情」が育ち「ハート」となったなら、それを壊さないように「錠」をかけて大切にしてください!」
校長はそう言って言葉を締め括ると、何故かニヤニヤしながら「まぁ今期の卒業生の中には…」と更に口を開いた。
「このハートを完成させて、大切に「錠」をかけてる生徒もすでにいるみたいですけどね♪」
校長はそう言うとマイクを手に取り、俺の方をしっかりと見据えて叫んだ。
「ねぇ、成瀬さんに加成我くん♪」
「はぁっ!?」
「ちょっ!?」
校長のとんでも発言に俺と満が変な声を出した瞬間…
ドッ!!!
「「だーはっはっはっはーーっ!!!」」
「「アハハハハハハーー!!」」
俺達の声は会場は爆笑の渦に飲み込まれた。
「校長、てめえこらぁーーー!!」
俺は校長のとんでもサプライズに憤慨するが…
「やめとけヒロ、下手に反応したら逆効果だ…」
隣の満がそう言って静止するので、俺は「ぐぬぬぬぬ///」と歯を食いしばり耐えたのだった。
こうして俺の高校生活は…終わる目前に様々なドタバタを交えて終了した。
因みに余談だが、あの「とんでも贈る言葉」の後の「卒業証書授与」についても…
「加成我君が授与代表なんだし、成瀬さんも一緒に横に並びなよ。高校生最後の二人の共同作業ってことでさぁ♪」
と校長が提案し、周りの「いいぞ、やれやれ!」の圧に勝てず…二人で並んで受け取る事になった。
そして更に余談だが、この時校長が俺達二人に「卒業証書」と一緒に「婚姻届」を渡してきたので…思わず校長のヅラを毟り取って来賓席にぶん投げたが、俺は何一つ後悔していなかった。
因みに校長には「ええっ!!」と驚かれたが、「まぁウケたしいいや♪」とあまりダメージにはならかった。