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モブキャラ人生が終了したら二周目が始まったんで、今度は主人公になりたい  作者: 長篠金泥
幕間 その3

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第119話 「やっと、お迎えが来たみてぇだ」

※今回は榛沢はんざわ(工場突入前の乱闘で荊斗に秒殺されたブランクヘッズ幹部)視点になります

「なぁザワさん……ホントにココで待ってて大丈夫か? 逃げた方がよくね?」

「逃げるったって……どうすんだよ長原ロング。ドコだか知らんド田舎にいんのに、車はどれも動かねぇし、全員がカネも盗られてる。オメェも、ヒザがぶっ壊れてまともに歩けねぇだろが」


 こういうことを言ってくるのは、コイツで三人目だ。

 ブランクヘッズ(ウチ)じゃ珍しい慎重派だと思ってたが、単なる小心者だな。

 不安になるのはわからんでもないが、丸投げしてくるアホばっかりであきれる。

 こういう場合、逃げる方法や逃げた後の始末もセットで考えろダボが。


「つってもよぉ、先代――梁瀬やなせさん絶対ぜってーゴリゴリにブチキレるだろうし、下手したら初代のヒトらにもヤキ入れられんじゃね? やっぱ逃げるべきだろ……超やべぇって」

「かもしれんけど、バックレたら渋谷にゃ戻れねぇぞ。それに、追い込みかけられたら東京にもいられねぇ。大体、亡命先にアテはあんのか?」


 そもそも身動きがとれん、って状態だってのにしつこいな。

 下浦しもうらってのから、警察沙汰になれば誘拐・監禁・その他諸々が避けられない、って説明されたのも忘れてんのか。

 俺個人は傷害でパクられた執行猶予べんとうも残ってるから、逮捕されたら確実に刑務所ムショ行きだ。

 まだ何か言いたげな長原だが、話していると殴りたくなってくる。


「……ちょっと、他の奴らの様子、見てくる」


 俺が意識を回復した時には、全てが終わっていた。

 人口過密のパジェロから抜け出し、工場の方へと向かうとそこは惨状そのもの。

 俺たちも喧嘩相手を「わからせる」目的で、ちょっとキツめにボコったりする。

 だけど、あいつらの重傷ぶりはそういうレベルじゃなく、手加減ゼロだ。

 荏柄えがらさんやサンキチとかいうのは、死んでもおかしくないレベル。

 スポンサーだった米丸よねまるは、頭から血をダラダラ流して死にかけてる。


「どうすんだよ、しかし……」


 ゆっくりと工場の通路を進みながら、痛みの残るあごさする。

 通報を避けるために救急車は呼べない、らしい。

 とは言え、自分らで病院に運ぶにしても、大量の怪我人をどう説明すんだ。

 荏柄さんは死にかけてて、外狩とがりむかいも行動不能、ってことは立場的に俺が責任者なんだろうか。

 にしても向の野郎、何でショットガン持ってるのに負けんだよ……

 つうか、二十人いて三人に蹴散らされるって、何の冗談なんだ。


「逮捕されなくても、今回の噂が広まったらウチは終わり、だな……」


 都内最強で売り出す、っていうリーダーの方針はもうダメだろう。

 バカな俺でも、不良をやっていく上で一番大事なことぐらいはわかる。

 それは「ナメられたままになったら終わり」で、ナメてきた奴は「ぶっ殺してでも上下関係をわからせる」ってことだ。

 だが、あいつらをどうにかしようってのは、きっと無理だ。

 人数集めても、銃を向けてもビビらない、そんな相手をどうすりゃいいのか。


「あぁ、榛沢さん……迎えの車、来ましたか?」


 疲れ果てた様子の下浦が、愛想笑あいそわらいを浮かべて訊いてくる。

 この場に残された中で、まともに動けるのは俺とコイツだけだ。

 動く度に、というか息をするだけでも右の肋骨ろっこつあたりがメチャクチャ痛むから、俺も立派な怪我人なんだろうが。


「まだ来ねぇ。荏柄さんたちの様子、どうよ」

「どう、なんですかね……素人目からも、だいぶマズい気はします」


 安全に移動させられないんで、重傷者は倒れてた場所に放置してある。

 一応、最大限の手当はしてあるが、半ば勘でやってるんで心配だ。

 荏柄さん、米丸、サンキチは意識不明で笑えない重態。

 外狩と向は重傷で、意識があってもまともに動けず喋れず。

 他のメンバーも、全員が入院必須の怪我をしている様子だ。

 膝や足首に大ダメージを受けている奴が多いのは、狙ってやってんだろうか。


「ここ来るのって……梁瀬さんと、誰なんだ?」

「たぶん、栃南とちなみっていうOTRのエラいさんと……あとは下っ端スタッフですかね」

「ウチの先代はともかく、他は普通の会社員だろ? こんなの見せて大丈夫か」

「まぁ、芸能界ってのも中々に普通じゃないんで」


 自慢するでも悪ぶるでもなく、ただ事実を述べたという雰囲気の下浦。

 飲み会に顔を出した梁瀬さんが、前に「何だかんだヤクザな仕事だ」と言っていたが、アレは文字通りだったんだろうか。

 昭和のスターとヤクザの関係ってのは公然の秘密な雰囲気があったが、平晟へいせいの今もそういう体質は変わってないのかもしれない。


「怪我人の回収と、現場の掃除で、全部なかったことにすんのか……でもよぉ、カチコミかけてきた連中と、アイドル二人の口止めはどうすんだ?」

「そこらへんは、OTRが何とかすんじゃないですか……たぶん」


 なげやりな下浦にカチンとくるが、ここで俺がキレても面倒が増えるだけ。

 そう考えてムカつきを飲み込み、冗談みたいにデカいコブを頭に作って転がっている、名前を覚えてない新人メンバーに声をかける。


「おい、大丈夫か」

「うぁ……ザワさん、スンマセン……オレ何も……何も、できねぇで……」


 何も出来なかったのは俺もだ、と言いかけるがヤメておく。

 こういう時、上の人間はあくまでも強気でいた方がいい、ハズだ。

 黙って肩をポンポン叩き、涙目になっているそいつから離れる。

 結局、俺のやれることはなさそうなんで、下浦に手を振ってまた外に出る。

 ハンドルを引っこ抜かれ、車体をボコボコにされたサンダーバードを絶望的な気分で眺めていると、エンジン音が近付いてくるのがわかった。


「やっと、お迎えが来たみてぇだ」


 そう口にしてから、死ぬこともそう表現するのを思い出した。

 不吉な予感に軽く身震みぶるいしながら、見覚えのあるBMW(ビーエム)と見覚えのない小型のバス、それと数台のワゴンの車列がやってくるのを待つ。

 長原の言っていた通り、どうやら初代――ブランクヘッズ創始者の空木うつぎさんと頭山とうやまさんが来てしまったようだ。

 ここ最近、荏柄さんと商いの話があるとかで、よく見かけてはいたが……


「こりゃあ、俺だけでも逃げるべきだった、かもな」


 爆裂に嫌な予感が湧き上がるが、今更もうどうにもならない。

 全ての責任は他の幹部連中に投げる、と決意しながら頭を下げておく。

 車の停まる音が途切れたので頭を上げようとすると、阻止するように後頭部にフルパワーの平手打ちが降ってきた。


「オゥ榛沢ァ……どうなってんだ!? 何なんだ、こりゃあよぉ!」


 そう怒鳴ってくるのは、開幕からキレ散らかしている梁瀬さんだ。

 俺たちへの監督不行き届きに対して、初代からの懲罰ちょうばつがあったらしい。

 顔の数か所がれていて、ベージュのシャツには靴跡が刻まれている。

 一応はタレントだし、今は出演しているドラマの撮影中だってのに容赦ようしゃなしか。


「いやあの、それがですぶぇっ――」


 事情を説明しようとするが、腹を蹴られて呼吸が強制停止される。

 思わず背中を丸めると、また頭を二発、三発とぱたかれた。

 四発、五発と勢いを増す打撃に倒れそうになるが、不意に追加は終了。


「アホなのか、ヤナ。これから話聞く相手、KOしてどうすんだ」

「そもそも、オメーのしつけがなってねぇせいだろ、三代目の連中がガタガタなんは、よっ」

「あだっ――ウスっ、申し訳ねぇっス先輩!」


 俺と同じように叩かれた梁瀬さんが、初代リーダー二人に詫びを入れた。

 空木さんも頭山さんも引退してはいるが、チームへの影響力は今も絶大だ。

 手広く怪しげな商売をやっていて、その大部分は非合法スレスレだったりヤクザまがいだったりするそうだが、お飾りの社長を用意して自分たちは安全圏にいるらしい。

 二代目の梁瀬さんも三代目の荏柄さんも恐ろしいが、この二人は何というか怖さの『質』が少し違うような気がずっとしている。


「で? 何がどうなってんだか、手短に説明しろ」

「ヤナの説明、ゴチャゴチャしてよくわかんねぇからよぉ」


 冷たく言ってくる空木さんと、笑いながら言ってくる頭山さんに、もう一度深く頭を下げてから説明を始める。

 俺にもよくわからない経緯や、気絶している間の出来事は、下浦からの情報だ。

 小金持ちの遊び人といった風体の空木さんは、話の途中から猛スピードで機嫌が悪くなり、何度か梁瀬さんの尻を蹴っていた。

 トレーニングの最中に呼び出されたようなジャージ姿の頭山さんは、苦笑いと空笑いを連発しながら、立て続けに煙草を灰にしていく。


「商品に手を付けるのは、カスのやることだって言ってんだろがっ!」

「はいっ! それはかなり、キツめに言っといたんですけど……」

「言っただけで守れてねぇなら意味、ねぇ、だろ、がっ、ダァホッ!」

「うっ、ぐっ、にっ、ぷぃ、ぁばっ――」


 短いストロークで、空木さんの右拳が連続して脳天に落とされた。

 本気じゃないにしても相当の威力らしく、梁瀬さんから苦悶くもんの声が漏れる。

 そんな光景を見ながら長い溜息を発した頭山さんは、分厚い手の甲で俺の胸をトントンと軽く叩いてから言う。


「そのバカ強ぇチンピラ三人組って、どこの誰だかわかんねぇの」

「米丸なら知ってるかも、ですけど……死にかけてんで訊けるかどうか」


 俺が自信なさげに答えると、空木さんが舌打ちして吐き捨てる。


「そこらは後回しでいいだろ。まずは荏柄のダボとその他大勢、回収すんぞ」

「ウス、OTRの連中に担架たんかを用意させたんで、それで運ばせましょう」


 梁瀬さんが応じると、頭山さんが芸能事務所の職員らしいのに色々と指示を出す。

 俺もそっちを手伝おうと歩いて行くと、工場から出てきた下浦と目が合った。

 疲れの滲んだ愛想笑いも消え、死んだ目と半開きの口で俺たちを見ている。

 もしかすると、今の俺はアイツとよく似た表情なのかもしれない……

ここからしばらく幕間が続きます。

番外編のようなフリをして、普通に本編の続きだったり今後の伏線だったりすることもあるので、読み飛ばさないようご注意ください。

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